星野野球のひな型がいきなり出た。楽天の沖縄・久米島キャンプ第3クール3日目の12日、初の紅白戦が行われた。紅組に入った1番聖沢諒外野手(25)、2番内村賢介内野手(24)のコンビがともに3盗塁、計6盗塁の荒稼ぎ。9番西田も盗塁を決め、7イニング制では異例の7盗塁で紅組が13-0と大勝した。就任から機動力重視を掲げる星野仙一監督(64)は「今年のウチのモットーにする」。足でライバルをかき回す。

 星野監督が及第点以上を付けたのも当然だった。久々の試合で結果に出ないミスは確かにあった。だがそれを上回る、大いなる収穫があった。「行けたらどんどん行け!」。走力ある選手に盗塁のパスを与え、昨季78個に終わったチーム盗塁数を3倍にする改革。聖沢&内村のコンビが応えてみせた。

 試合前に「走れる選手は、2球目までの早いカウントで走るように」と意識付けの指示はあった。だが、ただのイケイケ、ではなかった。1、2番コンビは塁上と打席で高レベルなコミュニケーションを取り合い、6個も塁を奪っていった。象徴的だったのは3回2死。一塁聖沢、打者内村の場面だった。

 1ボールの後の2球目。聖沢が走った。内村が空振りし盗塁成功。捕手嶋は、真ん中低めの投球を1度ミットに当てたが、真下に落とし送球できなかった。マウンドから状況を見ていた白組先発の栂野が証言する。

 栂野

 キャッチャーを責められないほど、空振りのタイミングが絶妙でした。

 レートスイング気味に盗塁を助けていた。内村は初回無死一塁の第1打席、初球にも渋い動きをしている。セーフティーバントの構えをし、わざと空振り。聖沢をアシストしようと試みている。ソフトバンクスコアラーに「初めての試合で…。いやですね。いやらしい野球をしている」と言わせるスパイスを利かせていたのは、今季新設ポストに就任した星野監督の参謀だった。

 試合中、仁村徹作戦コーチが両軍を忙しく往来する姿があった。内村には「ただ待つのではなくて。バントの構えでも空振りしたりして、走者をアシストしなさい」と伝えた。星野監督が「コーチの指示が行き渡っている」と信頼する首脳陣の中枢。昨季上位にやられた足攻めを、ずっと高い精度で倍返しするつもりだ。

 松井稼を筆頭に脚力自慢がめじろ押し。多様な打順編成が可能となった。星野監督は「走る勇気、前に前にという意識は少し見えた。内村は自分を分かっている。いい仕事をした」と言ったが、試合直後のミーティングでは選手にこう話している。「もっと走り回って欲しい」。初陣の7盗塁はスタート地点だ。【宮下敬至】

 [2011年2月13日12時36分

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