日本ハム・ダルビッシュ有投手(24)が剛球を連発し、無安打無得点リレーの立役者になった。沖縄・名護で24日に行われた韓国サムスンとの試合に先発。最速154キロをマークし、3回を3奪三振、打者9人を完璧に抑えた。この流れに乗って、2番手からの4投手も無安打無得点。許した走者は木田の四球だけという打者27人の「準完全試合」を達成した。

 パワー自慢の韓国の名門を力で抑えた。ダルビッシュがアドレナリン全開で、マウンドから見下ろした。磨きをかけた速球を軸に押しまくる。19日の紅白戦以来、今季2度目の実戦。初の対外試合でスライダーとカーブ、チェンジアップを織り交ぜ、寄せ付けない。「これっていうものができましたね」。躍動のシーズンを確信する40球だった。

 バックネット裏がざわめいた。1回1死で、2番朴漢伊の初球。高めのボール球。相手サムスンのスピードガンに「154」が浮き上がった。この驚異の1球を筆頭に7球が150キロ超。変化球との球速差は最大60キロ。打者9人から3三振を奪い、外野に打球を運ばせなかった。「あの真っすぐがあれば大丈夫」と、自身も太鼓判を押す威力、キレだった。

 サプライズへの序章になった。2番手木田が先頭打者に四球を与えたが、後続を併殺。3番手武田久、4番手武田勝、最終5番手の八木は1人も走者を許さない。エースは見届けることなく宿舎へ戻ったが、無安打無得点の継投で、打者27人の「準完全試合」。左腕武田勝が「ダルの影響が大きい」というほど打者の感覚を狂わせて“春の珍事”へと誘った。

 開幕まで1カ月。トップギアに入る前に、肉体改造した成果、すごみをまた見せつけた。5年連続の開幕投手を務める3月25日開幕戦で対戦する西武の偵察部隊も仰天した。亀井スコアラーは「やる前から白旗を上げてはいけないけれど、ちょっとお手上げ。(仲が良い)涌井にメールさせて弱点を探らせようかな」とあきれるほど、スキのない仕上がりだ。

 空前の佑ちゃんフィーバーの中で、大黒柱の存在感が一気に強くなった。「この前よりも良かった。真っすぐはアバウトにいった。あとは(直球の)制球を良くしたい」。開幕を逆算できるほど、クリアするハードルも少なくなった。次回登板は3月3日ヤクルト戦(札幌ドーム)の予定。「まだ投げていない変化球もあるんで」と、本番仕様へ近づけていく。無敵の1年になる予感が、24歳の大エースから漂ってきた。【高山通史】

 [2011年2月25日9時14分

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