<阪神2-6ヤクルト>◇1日◇甲子園

 セ界の本塁打キングは、カリブ海からやってきたイチローの元同僚だ。ヤクルトの新外国人、ウラディミール・バレンティン外野手(26)が、2本塁打を放ち、8本塁打でリーグ単独トップに立った。この日から、6番だった打順が5番に昇格。2点を追う2回に中堅右へソロ、7回は右翼席に2ランを放ちパワーを見せつけた。3番ホワイトセル、4番畠山と新クリーンアップを組んで、チームの連敗をストップした。

 フラフラと高く上がった打球が、そのまま右翼席に飛び込んだ。右飛と信じ込んだ虎党の歓声は、静寂に変わる。ヤクルトの「新5番」バレンティンが、カットボールをとらえてリーグトップの第8号を放った。「(強風だった)昨日の風なら入ってないと思うけど、今日は浜風が吹いてなかったおかげでフェンスを越えてくれたよ」とニヤリ。2発に、185センチ、100キロのパワーを詰め込んだ。

 前日までは6番だったが、4月終了時点で打率3割、6本塁打の実績を残して初めてクリーンアップに抜てきされた。

 その第1打席、2回無死から直球を中堅右にライナーでたたき込んだ。1回表に先発の村中が右脇腹の違和感で緊急降板し、直後に2点を先制された。敗れれば3連敗。漂う重いムードを、一振りでかき消した。

 米国ではマリナーズ、レッズに所属し、大リーグ通算15本塁打。甲子園入りすると、約2年間ともにプレーした城島と再会した。「昔のチームメートと対戦するのは楽しい」。2発で成長した姿を見せた。

 オランダ領アンティル・キュラソー出身の島人(しまんちゅ)。お立ち台では「島からパワーをもらっている。そのパワーをこれから皆さんお見せしたい」と笑った。8本塁打と同時に、13四球もリーグ1位。ボール球に手を出さないように、日本人投手の攻め方の研究を欠かさない。

 今春のキャンプで初めて行ったフリー打撃は70スイングで1本塁打だった。キャンプ、オープン戦と首脳陣の期待を裏切り続けたが、シーズン開幕同時にガラリ。小川監督は「1度5番にしたら、よほどのことがない限り変えない」と期待する。26歳の助っ人に、大ブレークの予感が漂ってきた。【前田祐輔】