<巨人12-4中日>◇16日◇東京ドーム

 巨人が3日連続で胴上げ阻止に成功し、5連勝で5年連続のクライマックスシリーズ(CS)進出を決めた。優勝マジック1の首位中日に2度の打者一巡など猛攻を浴びせて今季最多の12得点。中日との同一カードでは2年ぶりの3連勝を果たした。左手首の剥離骨折から復帰してきた巨人小笠原道大内野手(37)が先発フル出場で2安打、昨季はロッテで下克上の主役となった大村が1軍登録されると即代打で出場し2安打1打点。アレックス・ラミレス外野手(37)も4戦連発と打線がつながり、逆転日本一への強力な「下克上態勢」が整った。

 こんな巨人が、見たかった。バットを振れば安打が飛び出し、打者一巡の猛攻が2度。ラミレスの4戦連発があれば、犠打に犠飛と小技も決まる。今季最多の12得点。3試合で合計23点を奪い、原監督は「いい3連戦でしたね。中日相手にこういう3連戦というのは珍しい。いつも接戦で。そういう意味で、非常に意義のある3連勝だと思います」と満足げに胸を張った。

 首位中日相手に約2年ぶりの同一カード3連勝で、本拠地での胴上げも回避した。5年連続CS進出も決めたが、この1勝の価値はそれだけにとどまらない。左手首の剥離骨折で15日に1軍復帰した小笠原が、8月23日以来の先発復帰で2安打。指揮官が「何とか今日、全イニング出てほしいなと。そうすれば彼にとってもチームにとっても大きな自信になりますから。そういう意味では予定通り来たなという感じがします」と話す狙い通り、順位は未決定ながらCSで雌雄を決するであろう中日に、ガッツ完全復活を印象づけることに成功した。

 「下克上」男も、中日に1年前の恐怖を思い出させた。昨季はリーグ3位からの日本一という下克上を成し遂げたロッテの主軸として、中日との日本シリーズで打率3割、1本塁打、6打点と打ちまくった大村が、1軍登録日に即代打で登場。2安打1打点と期待に応えた。2軍で取り組んできたスイング矯正の成果を発揮した大村は「向こう(2軍)ですごくいい時間を過ごせた。それがそのまま出せたかな」とにっこり。原監督が「ガッツにしてもサブローにしても、本当にいい戦力として戻ってきてくれたと思います」と、整いつつある「下克上態勢」の手応えを深めた。

 原監督は「CSの出場権を得ましたが、ペナントレース1ゲームある」と、まずは22日の横浜との今季最終戦(東京ドーム)を見据えた。緊張感と勝利への飢えが入り交じる、チーム内の空気。大村は「いい雰囲気、いい感じ。楽しくやれているように見える」と、下克上の気配と感じとった。

 ヤクルトが残り3試合で1勝すれば、2位は消滅する。それでも原監督は「何位からスタートするかまだ定かではありませんけれども、日本一になる権利を得たわけですから、そこに全力で戦っていきたいと思います」と言い切った。秋の気配漂う10月。巨人が本物の「強さ」と「下克上」というにおいを、強烈に醸し出し始めた。【浜本卓也】