虎の「嵐」になりやがれ!

 阪神の高知・安芸秋季キャンプで14日、塁間の速さを計測し俊足自慢5人組が好タイムを連発した。上本博紀内野手(25)は歴代最速の赤星氏を上回る最高記録をマーク。大和、俊介、田上、荒木らの好走塁に和田新監督が目を細めた。現役時代に「阪神少年隊」として売り出された指揮官の期待は、走塁革命を巻き起こす虎の「嵐」の鮮烈デビュー!?

 高知・安芸に朝から嵐が吹き荒れた。俊足自慢が、サブグラウンドをかっ飛ばす。一、二塁の塁間走で荒木、俊介、大和、田上と軒並み3秒5を切ってきた。期待が高まる中、大トリを務めた上本のタイムは驚異の3秒25。5度の盗塁王に輝いた赤星氏の記録を、0秒01、上回った。

 上本

 試合でどれだけ走れるか。試合はタイムだけではないです。まず、スタート。そこを目指しています。

 偉大な先輩を超えてもなお、探究する姿勢が頼もしい。現役時代に「少年隊」と呼ばれた和田監督も自ら率いる俊足5人衆に「走れるメンバーというところ」と評価した。指揮官が少年隊なら、和田チルドレンの5人組は今を時めく「嵐」といったところか。新生和田阪神の看板になるかもしれない若手選手。その期待感は、国民的アイドルグループに匹敵する。

 今季のチーム盗塁数62は、12球団で8位だった。レギュラーで盗塁が可能なのは鳥谷、平野、新井ら。この日は練習量をセーブした柴田も含め、阪神版「嵐」への要求は高い。スペシャリストの高等技術を引き合いに出すほどだ。

 和田監督

 ベースの回り方が大きい、小さいが差になる。それとスライディングのスピード。ちょっとおとなしいスライディングもいるので。赤星はスライディングの速さでアウトでも思わずセーフと言わせるほどだった。

 CDはヒット連発、テレビでもバラエティーやドラマで見ない日はないほどの超売れっ子。芸能界でいう嵐の存在感を、和田阪神では走り屋たちが担うことになる。接戦での終盤、ベンチに俊足選手がいると、用兵の幅はグッと広がる。塁に立てば、投手は走者への意識から精彩を欠く。勝負を大きく左右すると言っても過言ではないのだ。

 チーム打率リーグトップ、防御率3位ながら、Bクラス4位に沈んだ今季。接戦でのもろさが、余計にクローズアップされた。「勝負どころは大胆にいく」。和田監督が誇る足自慢たちの見せ所が増え、嵐を巻き起こすに違いない。【鎌田真一郎】

 ◆阪神少年隊

 88年に就任した村山監督が世代交代を進めるため、大野久、和田豊、中野佐資(さとる)の若手3選手を登用。そろって出場を増やした。3人とも小柄だったこともあり、当時人気絶頂だったアイドルグループになぞらえて命名され、売り出された。阪神でのユニットといえば、01年春キャンプで野村監督が命名した「F1セブン」も有名。高波文一、平下晃司、上坂太一郎、松田匡司、沖原佳典、赤星憲広、藤本敦士と走力のある若手7人をピックアップ。ポジション争いを活性化した。この年、赤星が39盗塁で盗塁王に輝いた。