<西武6-1楽天>◇3日◇西武ドーム

 ようやく約束を果たした。西武ドラフト2位の小石博孝投手(25)が、7回4安打無失点でプロ初勝利を挙げ、チームの連敗を3で止めた。高校時代に「伊藤園」の俳句大会で都道府県賞を受賞。キャンプ中に封印したが、プロ初勝利のお立ち台で披露するという宣言通りに一句詠んだ。実は前夜に思案していたが、直前でアレンジ。字余りの連続で「やらかしたぁ」と頭をかいたのも、ご愛嬌(あいきょう)か…。

 インタビュアーに一句求められた瞬間、小石は思い切り“力んだ”。

 「初志貫徹

 負けぬという気持ちで

 初勝利」

 字余りの多さに、球場全体がざわついた。お立ち台後、字数を指折り数えながら「やらかしたぁ。すみません、字余りで」と頭をかいた姿は、最下位に沈むチームの連敗を3で止めた頼もしさとは対照的だった。

 「本当は俳句とか詠みたくないんです。僕は野球選手なので」と言ったことがある。入団後はケーキ作りとともに、新人“トップ級”の注目を集めたが、野球人としては不本意だった。それでも、ファンからの手紙に添えられる「俳句、楽しみにしてます」の言葉から、期待に応えたい思いが芽生えていた。

 「負けたくない

 強い気持ちで

 初勝利」

 前夜、何げなく思い付いたが、お立ち台の直前で大幅変更。「今日やろうとしたことを最初から最後まで貫けたので」と初志貫徹に変えた。季語もなく、韻律もバラバラだったが、そこには小石流のファンサービス精神が詰まっていた。

 マウンド上では楽天打線を幻惑させた。2ボールが6度、3ボールが2度あったが、次の球は全てストライク。最大のピンチだった3点リードの4回2死一、二塁では、カウント3ボールから嶋を外角直球で二ゴロに打ち取った。逆球、抜けた球もあったが、勝負の1球に狂いはなかった。この日の試合前、立正大の先輩西口から「コントロールは気にするな」と助言を受けた通り、捕手のミットめがけ、全力で腕を振った。

 この日、勝利を届けたい両親は故郷の大分にいた。初登板は同じ九州地方で観戦に訪れたが、この日はテレビ観戦。「勝つことができたので、親孝行できたかな。(ウイニングボールは)親にあげます」と笑った。大きく手を掲げ「やりましたぁ!」で始まったお立ち台。小石らしさがビッシリと詰まったプロ初勝利だった。【久保賢吾】

 ◆小石博孝(こいし・ひろたか)1987年(昭62)4月13日、大分・日出(ひじ)町生まれ。鶴崎工では3年夏の県4強が最高成績。東都大学リーグの立正大では4年の09年秋、エースとして創部61年目のリーグ初優勝。明治神宮大会も2勝を挙げ優勝した。NTT東日本では11年都市対抗で3試合に先発、防御率0・83で準優勝。同年ドラフト2位で西武入団。初登板の4月26日ソフトバンク戦は先発して3回1/3、2失点で勝敗なし。178センチ、85キロ。左投げ左打ち。今季推定年俸1300万円。ちなみに都道府県賞を受賞した句は「二人きり

 いつも以上の

 心臓音」。