今成よ、江藤になれ!

 上本よ、井端になれ!

 和田阪神に新しく入閣した高代延博内野守備走塁コーチ(59)が秋季キャンプ初日から「改革」に乗り出した。今季、外野手に挑戦したばかりの今成亮太捕手(26)を三塁に再コンバート。広島で指導した元本塁打王・江藤智(現巨人コーチ)になぞらえて「何とか一人前にします」と宣言した。日韓合わせて7球団を渡り歩き、WBC日本代表でも指導経験のあるベテランコーチはエンジン全開だった。

 秋季キャンプ初日、驚きのプランが明らかになった。午前中の投内連係。捕手から外野手に挑戦したばかりの今成が内野グラブをはめて三塁にいた。打力を生かすための再コンバート。仕掛け人は最初からノックバットを握った高代内野守備走塁コーチだった。

 「あれだけの打者をスタメンで使えないというのはもったいない」

 CSファーストステージ初戦、広島前田健から中前適時打を放ったが、その後、右翼守備で落球。第2戦はスタメンを外れた。これを見ていた高代コーチが和田監督に提案したという。

 投内連係では表面上ミスではなくても、連係できていないと判断すれば、やり直させた。選手の意識を試しているかのようだった。朝から夕方まで、若虎を鍛えた同コーチは、広島時代に指導した江藤、木村拓の名前を挙げて「サード今成」に太鼓判を押した。

 「広島で江藤が捕手から三塁手に、木村拓が捕手から内野手になったように。大いなる可能性がある。何とか一人前にしますと、監督に言いました」

 広島、巨人で活躍し、2度の本塁打王に輝いた江藤は捕手として広島に入団したが、3年目の91年に三塁手に転向。開幕からスタメン出場すると、2ケタ本塁打を放って、飛躍のきっかけとなった。

 「僕もできると思っています。チャンスが広がると思っているので、マイナス思考はないです」

 今成も力強く言った。今季、固定できなかった三塁に新たな競争が生まれた。

 さらに全体練習終了後にはサブグラウンドで森田、今成、西田、北條、上本を集めて特守。この中で中日時代に井端にもやらせたという四股踏みを導入した。「井端も最初は1分しかできなかったが、キャンプが終わる頃には5分できるようになった」という捕球姿勢を低くするための名物練習だ。この中で最も安定した姿勢を保つことができた上本には「この時期は技術ではなく、基本的な体力だけど、上本はスピードと体の強さがある。魅力的な選手だ」と期待を示した。

 今成が本塁打王・江藤に、上本が名手・井端に。そうなれば、計り知れない戦力の底上げ。百戦錬磨のベテランコーチの若虎改革が始まった。【鈴木忠平】