とどめは「小青木」!?

 阪神の高知・安芸秋季キャンプで18日、紅白戦を行い1年目の緒方凌介外野手(23)が猛アピールの本塁打を放った。掛布雅之GM付育成&打撃コーディネーター(DC=58)をうならせ、来年2月の1軍キャンプ参加を決定的にする一撃。かつて攻撃型1番として活躍した真弓、今岡、さらには米大リーグ・ブルワーズ青木をほうふつさせる楽しみなホープが出現した。

 ポテンシャルの高さが光る一撃だった。176センチと小柄な緒方が、ひときわ大きな存在感を示した。3回先頭で鶴の初球から貪欲に振っていく。3球目。内寄り直球に腕をたたむように強振すると白球はふわりと右翼上空を舞う。フェンス向こう側への着弾を見届けた掛布DCも絶賛した。

 「いいパンチ力をしている。3週間で、まず目についたのは彼です。オールラウンドだし、長打力のある1番というイメージ。怖い1番だね。育ってきたら、スピードもあるし、ホームランもそこそこ打てるという…」

 プロ1年目の今季は1軍で2試合出場しただけ。だが、秋季キャンプで評価はうなぎ上り。今季最後の実戦で猛アピールし、来年2月の1軍キャンプ参加も確定的だ。和田監督も「パンチ力というか、将来的に面白い1番になるんじゃないか」と口をそろえる。85年は真弓明信が引っ張り、03年は今岡誠が先頭打者弾を連発。ともに優勝に大きく貢献したトップバッターだ。掛布DCも「いま、ホームランを打てる1番いないだろ。(巨人)長野くらいか」と続ける。首脳陣2人が期待するのは「恐怖の1番打者」だろう。

 緒方自身が「生きる道」を明確に定めている。4回には強烈なライナーをはじき返す。三直に倒れたが、納得した。「今日のなかで一番、手応えがあった。本塁打を狙うのではなく、低く強い打球を意識している。学生ではクリーンアップを打たせてもらいましたが、この世界に入ったとき、本塁打は求められていないなと」。名門のPL学園、東洋大で主軸を張った男は過去の栄光を捨てている。

 追うべき背中も決まっている。「ヤクルト時代の青木さんのように高い打率を残して、しっかり振れる、本塁打も打てるのが理想です」。ユーチューブでは青木の打撃映像を何度も確認。首位打者3度、最多安打2度など俊足強打のヒットマンが理想像だ。

 掛布DCも「打ち方は青木よりキレイだけどね」と感心。小バースの森田、小掛布の今成、小ミスターの新井良…。名付け親は緒方にニックネームを授けなかったが、自らわきまえている。「小青木」が急成長すれば、猛虎の将来は一気に開けてくる。【酒井俊作】