あなたの色に染まります-。阪神のドラフト4位梅野隆太郎捕手(22=福岡大)が7日、4色のミットを手に兵庫・西宮市内の選手寮「虎風荘」に入寮した。前日6日には、DeNAにFA移籍した久保の人的補償として鶴岡一成捕手(36)の加入が発表されたばかり。投手の好みを考えてミットを替える「気配り女房」として、激戦区に飛び込む。

 青、赤黒、茶、オレンジ-。色とりどりの商売道具が部屋に並んだ。ヒートアップが予想される正捕手争いに参戦するべく、4色のキャッチャーミットを梅野は戦いの地に持ち込んだ。

 「たくさんのカラーを持ってきました。ピッチャーの好みもいろいろある。コミュニケーションを含めていい関係を持てるように、ピッチャーのことを考えて持ってきました」

 史上最強助っ人と言われる元阪神バース氏の後を継ぐ背番号「44」。3日に始動した際には、いきなりフリー打撃で144スイングするなど、これまでは「打」に注目が集まった。しかし、梅野自身がプロ入り決定後考えていたのは、相棒となる投手の心理だった。

 「カラーリングについては、古田さん(元ヤクルト)や矢野さん(元阪神)が青と赤の2種類を使っていたと聞いたことがある。テレビでも見ましたし、そういうところを参考にしました」

 大学時代は自らの好きな色であるオレンジ一色を使用していた。しかし、プロ入りを果たしたことで「今までは多く(の色を)持っていなかったけれど、そういうところから入っていかないといけないのかな」と方針転換を決断した。

 一方で1年目からの1軍での活躍を目指す梅野にとっては、厳しい現実が待ち受ける。昨季112試合出場の藤井を筆頭に日高、台頭した清水に加え、前日6日にはDeNAの主戦捕手である鶴岡が加入。経験豊富なこの3人をまず超えなければ、梅野の1軍マスクはない。「何色が投げやすいですか?」。初めて接する投手とまずコミュニケーションをとる。投手目線に立つことが梅野の選んだ1軍定着への秘策だった。それだけでない。赤黒のミットは矢野氏モデル。それ以外の3つは球を捕る部分の深さを、一般のものよりも少し浅くした。新ミットには投手への気遣いに加え、自らの要望も詰まっている。

 「素晴らしい環境の中で野球に専念できてうれしい。いい球団に入れたなと思いました」

 あす9日から新人合同自主トレがスタートする。「気配り女房」は投手を味方に付け、正捕手争いに割って入る。【松本航】

 ◆色の見え方

 元阪神の矢野は07年、「投手の集中力が増す」という理由から、それまで使っていた黒や赤に加えて青色のミットを導入した。一般的に赤はアドレナリンの分泌が盛んに。オレンジはプレッシャーを和らげ、青は集中力を高める。茶色は緊張を緩和する効果があると言われる。

 ◆梅野隆太郎(うめの・りゅうたろう)1991年(平3)6月17日、福岡県生まれ。福岡工大城東では2年夏の県大会ベスト8が最高。3年時に3番を打ち、阪神中谷が4番。高校通算25本塁打。大学通算28本塁打。11月の明治神宮大会は初戦敗退も本塁打を放った。遠投115メートル。173センチ、80キロ。右投げ右打ち。