阪神福留孝介外野手(36)が19日、2年目の今季にかける思いを激白した。年明けからのハワイ自主トレを打ち上げて17日に帰国。体重を5キロ絞った「逆襲ボディー」を完成させた。オフには断食も敢行し食生活から見直した。若手の挑戦をはね返すための土台はできた。野球人生で最もつまらないシーズンだった昨季からの“倍返し”が始まる。

 福留は来るべきキャンプインを見据えた。引き締まった表情に加え、体も昨季に比べて、スリムになっていた。

 福留

 痩せたように見える?

 去年のシーズンが終わった翌日から断食をして5キロ落ちた。それからオフの間、ずっと体重は変わっていないんだ。

 昨年10月13日、CSファーストステージ第2戦、広島に敗れ、阪神のシーズンは終わった。自身も右ふくらはぎを痛めて途中交代という最悪の結末となった。この翌日から福留の肉体改造はスタートした。

 福留

 4日間、酵素ドリンクというのを飲むだけで、何も食べなかった。2日目くらいから頭の芯が痛くなるような感覚になったけど、やりきった後はすっきりした。そこからリハビリを兼ねて下半身のトレーニングを始めた。

 初めて断食をした。これまで筋力トレには消極的だったが、下半身のウエートトレーニングも取り入れた。すべては昨季の屈辱が突き動かしたものだった。5月に左膝半月板を痛めて手術をした。その後も左膝の影響からか、戦線離脱を繰り返した。出場は63試合にとどまり、打率1割9分8厘、6本塁打、31打点。「野球人生で最もつまらないシーズン」と表現した。30代半ば、自身の肉体と向き合う時期と悟った。

 福留

 やっぱり体がちゃんとしていないとね。打撃に関しては、体重を後ろ(軸足)に残しすぎていたかな。アメリカで動くボールを見ていたから、どうしても(体の)近くで打とうとしてしまった。でも、頭では分かっていても、どうしようもない感じだった。

 技術の土台となる肉体を見直すことから再出発した。専門家に意見を求めた。発酵食品がいいと聞くと、毎食ごとにチーズなどを食べた。朝、昼、夜の食卓を撮影、専門家にメールを送って助言してもらった。

 年明けからのハワイ自主トレでは米大リーグで指導経験のある友岡トレーナーの下、ヤクルト館山、DeNA多村、陸上短距離のロンドン五輪日本代表・飯塚翔太ら他球団、他競技に選手とともに走り中心の練習を積んだ。

 福留

 飯塚くんなんか、一緒に走ると最初の3、4メートルであっという間に置き去りにされる。走ってて思わず、笑っちゃった。そんなの初めて。刺激になるよ。

 土台はできた。2月のキャンプでは中日時代のような、時間無制限の振り込みを敢行するつもりだ。

 福留

 去年のキャンプは1年目で流れもわからなかったし、今から振り返ってみると遠慮していた部分もあった。振り込みが足りなかった。でも、今年はもうわかっているから、周囲を気にせずにやらせてもらう。気にしている場合じゃないしね。全体(練習)が終わった後に納得いくまで打つつもりだよ。

 ベテランへの信頼から高知・安芸のスタートも検討されているが、和田監督は「動けることが最低条件。フォーメーションの練習もしなくてはいけないし、そんなにびっくりするような人選にはならない」とも発言した。正式決定は23日のコーチ会議になりそうだが、福留はあくまで競争相手のいる沖縄で復活をアピールするつもりでいる。

 去年の流行で言えば「倍返し」となるだろう。だが、福留は半沢直樹のように眉間にしわを寄せることはなかった。

 福留

 いや、そう思わずに、普通にやるよ。

 そう言って、にやりと笑った。本人にとって“普通”のプレーをすることができれば、昨季の倍返しに相当するという意味だろう。あえてつくった笑顔の裏に自負がうかがえた。【取材・構成=鈴木忠平】