<楽天4-3阪神>◇3日◇コボスタ宮城

 パパは約束通りに打ったよ!

 楽天牧田明久外野手(32)が自らの誕生日を祝うサヨナラ打を放った。1点を追う9回裏、2死一、二塁。打席の中ではどこか冷静な自分がいた。「誕生日だし、こんなところで打ったらヒーローだよなぁ」。阪神ファンの絶叫と楽天ファンの歓声がこだましていても、集中力は高まるばかり。狙い球は直球1つに絞った。カウント1-0からの2球目、阪神の守護神呉の150キロ外角高めの直球を振り抜いた。

 打球はグングン伸び、右翼フェンスに直撃。クッションボールが転がり、二塁走者に続き、一塁走者のジョーンズまでも生還した。9回に一挙4点を返す、逆転勝利。水をかけられ、もみくちゃにされ「ああいう円の中心になるなんて初めてです。誕生日なんで、何かご褒美があるのかなと思っていたら、ありましたね」と笑顔がはじけた。

 愛娘との約束があった。この日は自身32度目の誕生日。家を出る直前に最愛の長女(7)と次女(4)から封筒に入った手紙を渡された。「パパ、ホームラン打ってきてね」。祝いの言葉はうれしかったが、少しだけ重圧がかかった。実は誕生日のスタメン起用はこれまでなかった。それだけに、空回りしないようにと誕生日を意識しなかった。だが、最終打席が回ってきた好機に奮い立った。「(スタンドインまで)もうちょっとでしたね。でも自慢できるかな」とホッとした表情を浮かべた。

 昨年は日本シリーズ第7戦で本塁打を放ち、日本一に貢献。それでも年間を通じて活躍していないと、優勝旅行は辞退した。ちょっぴり控えめな性格で、レフトスタンドのファンも「ハッピーバースデー」の合唱を忘れていた。2打席目からの合唱に「1打席目からだと意識するんで」と照れた男が主役の、最高の夜だった。【島根純】