<西武8-8日本ハム>◇16日◇西武ドーム

 この男、ただ者ではない。西武のドラフト1位ルーキー、森友哉捕手(19)が3試合連続本塁打の離れ業を演じた。日本ハム15回戦(西武ドーム)は7-8と1点ビハインドの延長10回、代打で登場し、同点ソロをバックスクリーンに運んだ。3戦連発は、高卒新人では46年ぶりの快挙。西武は森のひと振りで追いつき、パ・リーグ歴代2位の長時間試合を引き分けた。

 やはり規格外の男だった。1点を勝ち越された直後の延長10回。1死無走者から西武の代打森が振り抜いた打球は、大歓声の中、バックスクリーンで弾んだ。チームの敗戦危機を救う、打った瞬間にそれと分かる特大の3号ソロ。高めの151キロ直球を仕留めた1発に「まっすぐだけに合わせて思い切りいきました。(出塁出来なかったら)負けるかもという思いより、思い切って自分の個性を出そうと思いました」と汗をぬぐった。

 松井、清原という球史に残る強打者もなしえなかった高卒新人の3試合連続本塁打。「まさか3本打てるとは思っていなかった。(記録は)意識してなかったですが、光栄ですし、自分としてはうれしいです」と控えめに喜んだ。ダイヤモンドを1周した時も「うれしさはありました」と言いながらも、表情は緩めない。その姿にも弱冠19歳とは思えない、堂々とした雰囲気が漂った。

 14日に放ったプロ1号は流して左翼席へ。前夜の2号は引っ張って右翼席へ。そしてこの日は、バックスクリーンに放り込んだ。「方向は意識していない。コースに逆らわずに打つのが目標なので」と話す天性の打撃センス。それでも浮かれることはない。「打った後の次の打席で打てていない。打った次も打てるようにやっていきたい」。延長12回無死一、二塁のサヨナラ機に二ゴロに倒れた反省から、満足感は口にしなかった。

 まだまだ発展途上という自覚。だからこそ、“ダブルヘッダー”にも負けなかった。この日は正午から、西武第2で行われた東北学院大との2軍練習試合に先発出場。6回までマスクをかぶった。起床は午前6時半。睡眠時間も5時間程度で、体力的には「しんどいですね」と漏らしたが、「試合中は特に(疲れは)感じてない」と頼もしかった。

 今日17日の相手先発は、160キロ右腕の大谷。「高校時代には対戦してますし、(高校)ジャパンではバッテリーも組んでいたので。試合に出られれば、打ちたいと思います」と力を込めた。森自身、「予想以上です」と明かす、ど派手な1軍デビューを続ける。そのバットには、野球ファンの想像を超える、期待を抱かずにはいられない、底知れぬ力がある。【佐竹実】

 ▼ルーキー森が14日の1号、15日の2号に続いて本塁打。2リーグ制後、高卒新人の3試合連続本塁打は、53年8月6~9日豊田(西鉄)68年6月4~6日江島(中日)に次いで46年ぶり3人目。プロ1号から3試合連発の高卒新人は江島と森だけだ。この日も1号に続いて代打で記録し、代打本塁打を2本打った高卒新人は84年藤王(中日)に次いで2人目になる。本塁打の方向は1号から左→右→中。86年清原(西武)は左11本、中7本、右13本、93年松井(巨人)も左2本、中2本、右7本と高卒1年目で3方向に打っているが、森は1~3号できれいに3方向へ打ち分けた。