<阪神10-5ヤクルト>◇29日◇甲子園

 甘~い球はゴメス大使にお任せ!!

 長期ロード明けでも阪神マウロ・ゴメス内野手(29)は疲れ知らずだ。4回1死一、三塁。勇んで打席に入ろうとすると、ヤクルトが赤川から阿部に継投した。すぐに次打者のマートンがピーチ色のファイルを持って駆け寄ってくる。球種や配球傾向などを頭にたたき込んで勝負へ。高く浮いたスライダーを思い切り引っ張り、左前に運んだ。

 「チャンスだったし、強く球をたたくことを意識していたんだ。僕の打席からリリーフした投手だったけど、しっかりとタイミングを合わせて、打てる球を逃さずに打ち返せたよ」

 真夏に入ると、栄えある朗報が舞い込んだ。母国のドミニカ共和国大使館が同国「フルーツ大使」に任命することが判明。日本と同国の国交80周年を記念したもので特産品である、フルーツのプロモーションの一環だという。

 開幕から5カ月がたったこの時期に故郷から大使に任ぜられるのはレアケースだろう。常夏の国にはマンゴーやパパイア、パイナップルなどがたわわに実る。ドミニカ料理はバナナを生かし、ゴメスも大好物。PR役としては、うってつけの存在だ。

 この日は大使らしく、堂々と振る舞った。1、3回は制球が定まらない赤川の甘い蜜に引っ掛からず、四球を選んだ。6回は山中の食べ頃な遅球に詰まりながらも中前に落とす。5打席で4度出塁。わんさか得点が実り、主砲の面目躍如だった。ついに90打点で、リーグ1位の広島エルドレッドに1打点差と肉薄。球団の1年目外国人で最多の76年ブリーデン(92打点)にも迫っており、球団史にも名を刻む。打点王も射程圏内の助っ人が摘み取るものは決まっている。白星、そして悲願の逆転優勝だ。