どん底から、目指すは竜の鉄人だ!

 中日からドラフト3位指名された古本武尊(たける)外野手(21)が30日、京都市伏見区の龍谷大・深草キャンパスで指名あいさつを受けた。指名後に未成年飲酒の事実が発覚。会見の第一声は謝罪という異例の“みそぎスタート”となった。8月には左目を負傷し今月15日に手術を受けた。マイナス要素ばかりだが目標は「金本選手のような鉄人」-。苦難を乗り越え、大きな成功をつかみ取る。

 晴れの舞台とは思えない第一声だった。野球部のブレザー姿の古本は会見場でマイクを握り、伏し目がちに語り始めた。

 「このたびは、過去のこと、過去の自分の軽率な行動で多大な迷惑を掛けたことを申し訳なく思っています」

 指名の喜びを笑顔で語るどころかまるで“謝罪会見”のようだった。指名翌日の26日、ネット上に過去の過ちが拡散。未成年だった10年に飲酒運転し、それを自らネット上で公表していたことが判明した。球団側の調べによると、飲酒して自転車に乗った書き込みは本人によるものだった。当時、龍谷大内で処分が下り反省文も提出済み。球団は契約に問題なしと判断し、他の選手と同様に指名あいさつの運びとなった。

 みそぎの第一声は「忘れていたわけではなく、ずっと反省している。野球をしっかりして、反省している、変わったというのを見ていただけたらいい。本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです」と話す古本なりのケジメだった。

 他の指名選手との違いは、まだある。8月に左目に打球が当たり視力が著しく低下。眼窩(がんか)底骨折と網膜剥離で今月15日に手術を受けたばかり。安静が必要で、まだトレーニングはできない。「手術して時間がたつにつれ、ぼんやりというか、うっすらと見えてきた。だんだん良くなっています」。けがの直後は「もう野球はできないかもと思った」。そんなどん底に、まさにひと筋の光が差し込んだところだ。

 光の先に大きな成功像を思い描く。絶対に譲れないという信念のフルスイングを貫き通し、将来は「金本選手のような鉄人。『ケガしても出る』という選手になりたい」。心も体も大きな傷を負った。だからこそ“強い”選手になりたいと願う。竜の鉄人になるため、どん底からはい上がる。【八反誠】

 ◆古本武尊(ふるもと・たける)1990年(平2)12月4日、福岡県生まれ。福岡大大濠から龍谷大に進み、1年秋からレギュラーに。今夏の全日本選手権で4強入りし打率5割で首位打者。関西6大学リーグでは12年春にMVP、首位打者を獲得、同リーグでベストナイン3度受賞。強打の外野手で50メートルは6秒台前半、遠投も110メートル超。高校時代は投手としても最速147キロを計測している。176センチ、87キロ。右投げ、左打ち。