<プロ野球ドラフト会議>◇24日

 プロ野球ドラフト会議が24日に都内で行われ、岩出山(宮城)の今野龍太投手(3年)が全体最後の楽天9位で指名された。同校では初、宮城県の公立校からは98年の仙台・丹野祐樹投手(ヤクルト7位)以来15年ぶり。楽天からは7位で七十七銀行・相原和友(23=東北福祉大)、8位で日本製紙石巻・相沢晋(26=石巻専修大)と地元宮城の3投手が指名された。

 部員不足で秋季大会に1度も出場できなかった無名公立校のエース右腕が、全球団指名選手の最後に大きな夢をかなえた。ドラフト開始から2時間45分後。楽天9位で名前を呼ばれると、こわばっていた表情が緩んだ。今野は「選択終了が続いたときは、かからないかと思った。最後に地元の楽天から選ばれてうれしい」と白い歯を見せた。

 プロへの道を開いたのは楽天の本拠地Kスタだった。部員11人で臨んだ今夏、県大会の組み合わせが決まると「1つ勝てば、あのマウンドに立てる」。自らを奮い立たせて臨んだ米谷工との初戦で、9回16奪三振でノーヒットノーランをやってのけた。続く聖和学園との3回戦。小4で初めてプロ野球を観戦し、あこがれを抱いた舞台で毎回の12奪三振。敗れはしたが、楽天上岡スカウトの計測で自己最速の146キロをマークし、指名候補に挙がった。

 今春までプロ入りなど想像もしなかった。入学時は170センチ、60キロと細身で、直球は125キロ程度。「地元で3年間やって就職しようと思っていた」と振り返る。2年春からエースを任されたが部員は集まらず、昨秋には退部も考えた。それでも「自分がやめてから、あと1人で大会に出られたのに…となったら後悔する」。長い冬を5人で乗り越え大雨の入学式で勧誘のビラ配りも行った。今春の地区大会では5戦で64三振を奪うなど、30年ぶりの県大会出場に導いた。

 仲間と必死にアウト1つを取った高校生活。努力と才能が認められた今野は「岩出山に入ったから今の自分がある。将来はエースのような存在になりたい」と目を輝かせた。部存続の危機に立たされていた宮城のドクターKが、1位指名された高校NO・1左腕の桐光学園・松井裕樹(3年)とともに杜(もり)の都を熱くする。【鹿野雄太】