野球人生の分岐点で訪れた場所で、大勝負へ心身を整える。侍ジャパン菅野智之投手(27)が16日(日本時間17日)、先発する21日(同22日)のWBC準決勝に備えて、チームとともに米アリゾナ州へ到着した。「自分自身、自主トレをしていた思い出の地」。アリゾナは巨人入りする前の12年やプロ入り後も自主トレを行った縁深い場所だ。

 日本のエースとして再訪した。最初に訪れた12年は、失意から立ち上がる過程だった。11年ドラフトで日本ハムから1位指名され、入団拒否。意中の巨人に入団するため、心技体を磨いた思い入れの強い地だ。「浪人時代に培ったものがある。力をもらえれば」と愛着を語る。あれから、5年が経過した。巨人のエースという看板だけでなく、日の丸を背負う大黒柱に成長。世界の強国を相手に、実力を見せる時が来た。

 今大会は1次ラウンド第2戦の8日オーストラリア戦は4回1/3を4安打1失点。2次ラウンド第2戦、14日キューバ戦は4回7安打4失点。やや苦しんだが、権藤投手コーチは「今回の侍ジャパンは菅野のチーム」と話すなど、信頼度は変わらない。投打一丸の戦いの末、東京ラウンドは6戦全勝で勝ち抜いた。菅野も「全勝の勢いがある。しっかり準備したい」と、視線は準決勝だけを見据える。

 役割は自負している。「期待に応えるのが役割」と、任された試合で勝利に導く快投を見せるだけ。羽田空港からのチャーター便での移動は「寝ていました」と、約10時間リラックスして移動で体を休めた。「全員で世界一。力を合わせて頑張りたい」。かつて鍛錬したアリゾナで万全に整え、決戦の地へ向かう。【木下大輔】