プロレス実況を中心に活躍する清野茂樹アナウンサー(46)がパーソナリティーを務めるラジオ日本のプロレス番組「真夜中のハーリー&レイス」(毎週日曜午後11時~同30分)が4月5日に10周年を迎える。唯一無二のプロレス番組を長く続けてきた清野アナに話を聞いた。

ラジオ日本「真夜中のハーリー&レイス」の収録ブースに座る清野茂樹アナウンサー。手前は毎回ゲストと争うNWAベルト
ラジオ日本「真夜中のハーリー&レイス」の収録ブースに座る清野茂樹アナウンサー。手前は毎回ゲストと争うNWAベルト

番組にはいつも“プロレスラー”がやって来る。本物のレスラーはもちろん、芸人、小説家、ジャーナリストと過去500人超のゲストの肩書はさまざまだ。毎回「NWAベルト」をかけて戦う設定だが、内容はプロレスの話題に特化しない。パーソナリティーである清野アナが受け役となって、ゲストの仕事やプライベートの話を自由に引き出す。

清野アナは番組について、こう説明する。「プロレスの番組といってプロレスラーを呼ぶのは容易だと思うんです。他ジャンルの人を呼ぶのはプロレス関係の人だけ呼ぶとプロレスファンの方しか聞かなくなるから。見方を変えれば番組に来る人はすべてプロレスラー。リングに上がってもらっている時点でみんなプロレスラーなんです」。内容が良くても悪くても編集はなし。「それもプロレスの試合と一緒。こういうのがプロレスなんだよ、というぼくなりの提示なんです」。狭い時は約3畳、広くて6畳ほどの収録ブースで毎週試合が行われている。

スタートは10年4月。初回はグレート・カブキが電話越しに登場。2回目に当時格闘技団体DREAMを運営していた笹原圭一氏が生出演して以来、毎回ゲストを呼びノーカットで話す形が出来た。ゲストである挑戦者は表向きはNWA総会で決定とされているが、有名、無名は問わず清野アナが話を聞きたい相手、光を当てたい人に自らオファーをする。

「今でも断られることが多いです! 『私プロレス詳しくないんで』と。いや、そうじゃないんです、あなたの話が聞きたいんですと熱意を相手に伝えて、ここまでやってきました。電話で直接お話ししたり、メール送ったり、手紙をかくこともあります」。撮りだめをせず毎週収録し、同じゲストを2度呼ばないことも信条。あえて負荷をかけて10年続けてきた。

一発勝負だからこそアクシデントも多い。最もつらく、思い出にも残るのは「(話が)ハネないこと」。酒に関わるエピソードも多い。前田日明(12年2月21日)は六本木で約6時間飲んだ後、「水割りだったら何杯でも大丈夫なんだよ」とほろ酔いで15分前にスタジオ到着。去年タレント壇蜜と結婚した漫画家清野とおる氏(11年8月30日)も痛飲した様子で現れ、谷津嘉章(13年2月5日)は足がふらつくほどの泥酔で生放送に臨んだ。

肌と肌を合わせるプロレスのように「1対1でスタジオに入った時間というのは濃密なんです」。収録後、ゲストとの関係が続き、深まることも多いという。「プロレスラーもキャリア10年ぐらいたってやっと味が出てくる。ラジオも一緒。ぼくは受け身専門ですけどね」。10年続けて「山の頂上にのぼった感じ」と達成感はありつつも「間違いなくぼくの代表作で、ライフワーク。なくなったらさみしい」と継続を願う。ただ、10周年を機に、「プロレスラーのヒール転向のように」と形式を変えることも検討中だ。【高場泉穂】

◆清野茂樹(きよの・しげき)1973年(昭48)8月6日、神戸市生まれ。青山学院大卒業。18年に早大大学院政治学研究科修士課程修了。広島エフエム放送でアナウンサーを経験後、06年からフリー。新日本プロレス、WWE、UFCなどプロレス、格闘技の実況を中心にCMナレーション、司会など幅広く活動。