元K-1王者の小比類巻貴之氏(43)が主催するキックボクシングの大会「EXECUTIVE FIGHT ~武士道~」が16日、都内で行われた。今大会は、元120円Jリーガーの安彦考真(43)の格闘家デビュー戦となったが、安彦以外はほとんどが格闘技に打ち込む会社経営者同士の対戦だった。会場は選手の家族や社員などが、感染対策をした上で、結婚式のように円卓に座って応援。ラウンドガールにはシェイプUPガールズの中島史恵が務め、タレントの猫ひろしらがマイクパフォーマンスで盛り上げ、元光GENJIの大沢樹生も応援に駆けつけた。

出場14人中12人が初出場。減量も前日計量も花道を歩くことも、登場曲にのってリングに上がるのも、すべてが初めてだ。フラフラになりながらも、殴り合い戦う姿に会場からは惜しみない拍手が送られた。試合後にはそれぞれが「応援してくれてありがとうございました」と、集まってくれた仲間に感謝の言葉を述べた。試合後には社員同士が名刺交換する姿が多く見られ、今後に向けた“営業”もしっかり行われていた。

普段、社員に対して話し慣れているからか、マイクパフォーマンスはスムーズ。第3試合で勝利した島岡潤さん(41=ファーラウト代表取締役)は「スタミナがなさ過ぎてKOできなかったけど、また引き続き頑張りたい」とさらなる飛躍を誓った。一方で敗れた佐々木裕馬さん(34=Luup副社長兼CEO)は「勝ち負けにもこだわりたかった。悔しいのが正直な気持ち。4カ月で14キロ落としたので、明日からラーメンを復活させる。来月からはアフリカで事業を起こすので、よろしくお願いします」とジョーク混じりのあいさつ。また最年長出場で敗れた飯島正光さん(53=マサイイジマボーリング代表取締役社長)は「勝ったら辞めようと思っていたけど、負けたので最年長記録更新しようと思う」と“現役続行”を宣言した。

赤と青コーナーそれぞれに分けてトレーニングに励み、スパーリングも合宿も一緒には行わず、前日計量が初顔合わせ。小比類巻氏は「みんな経営者だし、仲良くしない方がおもしろい」と素人同士の対決の魅力を語る。会社のトップがファイターとして新たな挑戦をする姿に、ファンだけでなく、普段一緒に仕事をする社員も「格好いい」と大きな拍手を送った。第2回となった今大会。試合後には「今度は自分が参戦したい」という人もいた。今大会の中にも、前回大会を会場で観戦して魅力を感じ、出場を決めた選手もいる。

平均年齢41歳のオジサンたちの戦い。試合後は各選手が相手をたたえ、爽やかな笑顔を見せた。仕事も忘れ? トレーニングに励み、格闘技にひた向きに取り組む熱い姿は、プロアスリートとなんら変わりはない。彼らの熱い魂は、普段から会社を支える社員たちの心にも届いたに違いない。【松熊洋介】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)