米プロレスWWEの「選手ファースト」の理念が示された処分だった。先月までWWE選手部門の責任者だったマーク・カラノ氏が突然、クビになった。今月のレッスルマニア翌週に解雇された9選手の1人、WWEの女子王座を計6度戴冠したミッキー・ジェームス(41)による皮肉まじりのSNS投稿が導火線となっていた。

ジェームスは自らの荷物が入っている黒いごみ袋の写真を添え「親愛なるビンス・マクマホン会長、ご存じかどうかは分かりませんが、今日、WWEからの荷物を受け取りました。ありがとうございました」とつづった。この投稿を受け、次々とWWEファンが「パワーハラスメントだ」と騒ぎ出した。

即座にWWEの最高ブランド責任者となるビンス会長の娘ステファニー・マクマホン氏は自らのツイッターで「ミッキー・ジェームスさん、あなたや他の誰かにこのような仕打ちをしたことは恥ずかしいこと。個人的に、そしてWWEを代表しておわび申し上げます」と深く謝罪。その上で「(当該の)責任者はもう会社にはいません」と解雇したと明かした。さらにステファニー氏の夫で、WWE副社長を務めるトリプルHも「最近、解雇された一部の選手が無礼な扱いを受けたことを知り、即座に行動を起こしました。この軽率に行動した責任者は解雇され、もう会社にはいません」とSNSで報告した。

米メディアは、解雇されたカラノ氏がWWEに20年近く勤務しながら、選手の評判は決して良くなかったと報じている。選手部門の責任者という立場で、他にもパワハラとみられる言動があったとの関係者の証言も伝えられた。「選手ファースト」ではない人材は、たとえ中枢の管理職であっても即座に解雇に踏み切る。ハラスメントに関して米国は「シビア」と言われればそれまでだが、WWEの企業理念が貫かれているとすがすがしく思えた。

処分の重さには、さまざまな意見があるだろうが、パワハラ=解雇という強いメッセージが、世界中のファンを納得させたことだけは間違いない。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

WWEから荷物がごみ袋に入って届いたことをツイッターで報告した元WWE女子王者ミッキー・ジェームスのツイッター
WWEから荷物がごみ袋に入って届いたことをツイッターで報告した元WWE女子王者ミッキー・ジェームスのツイッター