13日に行われたRIZIN28大会で、朝倉未来(28)はメインの試合でクレベル・コイケに敗れた。試合後に今後のことについて聞かれると「引退も含めて考える」と口にしたが、翌14日のインスタグラムでは「少し休んで、また頑張ろうかな」と現役続行を示唆した。

クレベル(左)に敗れぼう然とする朝倉未来(2021年6月13日撮影)
クレベル(左)に敗れぼう然とする朝倉未来(2021年6月13日撮影)

自信を持って臨んだ試合だった。榊原CEOから提示された候補の中から、1番強い選手だと考えたクレベルを選んだ。ほとんどが一本勝ちという寝技得意の相手に打撃勝負を挑んだ。「寝技は想定していない。もし、そうなってもタップはせず、最後まで逃げる」。言葉通り、三角絞めで意識が遠のいても、レフェリーに止められるまでギブアップをしなかった。「タップの選択肢はなかった」。これまで「死を覚悟した」こともあるという朝倉の意地と覚悟を感じた。

マウントを取り、上から打撃を加えることができる有利な状態のように見えるが、実は相手もディフェンスをしながら十分な体勢になっているという三角絞めの怖さ。「1日何時間も練習している」とクレベルは話す。この日、同じボンサイ柔術出身のソウザもムサエフ相手にこの技で仕留めた。榊原CEOは「三角絞めが、はやるのでは」と語るほど、衝撃を与えた。

クレベル(左)に三角絞めで敗れる朝倉未来(2021年6月13日撮影)
クレベル(左)に三角絞めで敗れる朝倉未来(2021年6月13日撮影)

朝倉に勝機があったかに思えたシーンがあった。1回、左右のパンチがヒットし、クレベルがふらついた。一気にたたみかけるチャンスだと思った人も多いだろう。昨年末の大会から「自分から攻めに行くスタイルに変えた」と言っていただけに、一瞬ちゅうちょしたようにも見えた。「目が死んでなかったので、行き過ぎると危ないかなと思って、うかつに入れなかった。完全に戦意喪失していないと危ないなと」と心境を語った。結果、仕留めることはできず、回復の時間を与えてしまったが、クレベルは「バランスは崩したが、問題なかった。全然心配していなかった」と話しており、朝倉の判断は間違いとは言い難い。

試合前は強気な発言が多いが、昨年11月の斎藤戦も含め、負けた後は「相手が強かった」と潔く認める。ただ今回は「格闘技を始めて結構な月日が経った。アウトサイダーから初めて、東京ドームの大舞台に立てたが、ここで負けた時に今後格闘技をやっていく意味があるのか、というのがある」と珍しく弱気な発言も飛び出した。ユーチューバーとしての活動を制限し、限界まで追い込んで挑んだ戦い。「辞める」と語っていた30歳が近づいていたこともあり、敗れて格闘技人生の“天井”が見えたことで、試合後に「引退」の2文字を口にしたのかもしれない。

クレベルに敗れ目の上を腫らした朝倉未来(2021年6月13日撮影)
クレベルに敗れ目の上を腫らした朝倉未来(2021年6月13日撮影)

弟の海は「自分としては続けて欲しいと思っている」と話し、那須川はSNSで「年下の僕が言うのもなんですが、まだまだこれから。成長している限り終われない、終わってほしくない」と思いをつづっていた。榊原氏も「真っ向勝負を挑んだ未来に胸打たれた。しばらくしたら熱烈なラブコールを送りたい」と今後もサポートを続けるつもりだ。

朝倉は以前、引退について「これだけやっても勝てないと思われて辞めたい」と語っていたことがある。続行を示唆した裏には、そんな思いもあるのかもしれない。「格闘技を盛り上げる」と先頭に立って引っ張ってきた。思ったことははっきりと口にし、弱音を吐かず、多くの人に勇気を与えてきた。役割は十分に果たしてきたように思う。アンチもいるが、それ以上にもっと勇姿を見たいというファンがたくさんいる。インスタグラムのコメント欄には、多くの応援メッセージが届いた。彼らは、朝倉が最高の強さを見せた上で、納得する形でリングを降りてほしいと願っているだろう。【松熊洋介】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)