昨年からコロナ禍で自宅にこもり、時だけが流れていくような気分だ。たまに取材に行くことはあるが、ほぼ直行直帰する。気分転換にはなるが、やはり刺激は少ない。問題、課題は山積したままの中、平穏な毎日を過ごせることが一番か。

今年も7月に入って、もう半年が過ぎた。そんな中で東京五輪はやるようだ。開催の是非は棚上げで、観客制限か、無観客かが問題になっている。どうなんだろう。開催しても、世界が集まるスポーツ最大の祭典が、異常ないびつな大会となる。

いざ始まれば、世の中は五輪一色となるかもしれない。それも2週間あまりで大会は終わる。熱しやすく冷めやすい日本人気質。一方でコロナ禍の終息はいまだ見えない。スポーツの今後が心配される。

プロボクシングでは、この1年半でどんな影響があっただろうか。コロナ禍以前の19年と比較してみた。まずは国内での興行数と試合数。

◆19年 175興行、1328試合

◆20年 90興行、544試合

◆21年 44興行、242試合

昨年は3~6月の4カ月は興行がなくなり、実際に開催されたのは9カ月しかない。19年からは6割減となった。今年は6カ月でこの数字と、決して増えているとは言えない。

ちょっと気になった数字もあった。中止となった試合数。19年は55試合、20年は50試合、21年はここまで29試合と増加ペース。ケガ、体調不良や計量失敗が理由。日程の変更もままあり、コロナ禍での練習制限、体調管理の難しさを示しているようだ。

近年は国内興行の難しさから、海外へ積極的に出て行く傾向が強まっていた。しかし、海外も試合開催や渡航制限があり、世界戦も海外戦も減っている。

◆19年 世界戦34試合、海外戦93試合

◆20年 世界戦9試合、海外戦11試合

◆21年 世界戦9試合、海外戦8試合

今年は9月までに4試合の世界戦が予定されている。井上尚弥を筆頭に海外戦を中心に増加の傾向だ。ただし、今年の海外8試合のうち世界戦以外は2試合だけ。世界戦以下のレベルになると、特にアジアの状況がままならず、今後は見通せない状況にある。

興行も時間制限、経費の問題などから、特に6回戦以下の試合が減っている。これはボクシングにとって最大の問題とも言える。試合ができないなら、競技を続ける、競技を目指す選手が減り、競技人口の減少となる。プロテストの受験者数を調べてみる。

◆19年 561人、合格445人

◆20年 332人、合格282人

◆21年 287人、合格247人

昨年は4割減だったが、今年は増加傾向にある。ちょっとホッとする。合格率は79・3%、84・9%、86・1%と上がっている。アマ経験者のプロ転向が多く、五輪イヤーという側面があるだろう。代表を逃したり、ここを節目に転向する選手がいる。ここでも問題がある。プロになっても試合相手がいないのだ。特に東南アジアから招へいできないことが大きい。

感染拡大の中でも、昨年は年をまたいで新人王戦を開催した。世界に例のない、日本独自のトーナメント戦。今年も各地区予選が始まっている。東日本では新宿フェイスで、8日から4日間連続で集中開催する。業界の存続への必死の努力がうかがえる。【河合香】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)