アリがデビューから2連続KO勝ちを飾った。といってもあの元世界ヘビー級王者ムハマドの孫。ニコ・アリ・ウォルシュ(21=米国)が、23日に米アトランタでミドル級4回戦に出場。1勝のジェームズ・ウェストリー(36=米国)に3回TKO勝ちした。8月のデビュー戦は1回TKO勝ちしていた。

2戦目は2回終了間際に、右ストレートで最初のダウンを奪う。3回に再び右ストレートを打ち込んで、2度目のダウンを奪った。相手は立ち上がったがセコンドがタオルを振って、棄権の意思を示してのストップとなった。

試合間隔は約2カ月と近年では短い。コロナ禍で試合ができないボクサーから見れば、うらやましい限り。祖父と27試合組んだボブ・アラム・プロモーターもバックアップ。ドレッドヘアと風貌は大分違うが、トップランクの興行で2試合ともESPNで中継され、伝説の王者の遺伝子に期待は大きいようだ。

アリ家からは7人目の娘レイラが、99年にプロデビューした。01年には父のライバルだったジョー・フレージャーの娘ジャッキー・ライドに判定勝ち。05年にはWBCスーパーミドル級で初代世界王者となった。ウォルシュはアリの三女ラシーダさんの次男。アマで30戦ほど経験あるそうだが将来は未知数だ。

日本でも元世界スーパーウエルター級王者輪島功一氏の孫が、14日に1回TKOでデビューを飾った。長女礒谷大子(ひろこ)さんと元日本ランカーの父和広トレーナーの長男大心(20)。高校でサッカーのGKで、本格的に始めて10カ月で昨年10月にプロテスト合格。さらに1年後と満を持してのデビューだった。

右ストレートでダウンを奪い、さらに連打でストップ勝ち。祖父は「完璧すぎて面白くねえ」と輪島節。世界王者を目標にするかわいい孫に「ベルトを巻くのは当然」と言い切った。日本でプロボクシングが本格化したのは戦後と言えるが、75年がたって3世が登場する時代になった。

昔はよくサラブレッドという表現が使われた。競走馬の血統を示すが、血筋がいいという比喩。親子でボクサーは数多いが、サラブレッドの成功例は少ない。親子世界王者はエスパダ(メキシコ)、スピンクス(米国)、バスケス(プエルトリコ)、アリ(米国)、チャベス(メキシコ)と世界でも5組しかいない。

9月に新王者となった矢吹正道が日本で93人目の世界王者となる。その中で、元世界王者の子供でプロ入りしたのも5組だけ。輪島、花形両氏の息子はすでに引退して会長とマネジャーになった。現役は辰吉寿以輝(25)畑中建人(23)山口臣馬(21)の3人となる。

辰吉は13勝(9KO)1分けと無敗で日本スーパーバンタム級10位につける。王座挑戦が近づくも9月の試合は2度目の中止とケガが多い。

畑中は18年にWBCユース世界フライ級王座獲得で日本初の親子ベルト保持者となった。2度防衛して12戦全勝(9KO)としている。

山口は沖縄生まれで白井具志堅ジムに入門し。1回40秒TKOでデビュー。次戦で引き分け後にジムが閉鎖し、帝拳ジムに移籍したばかりだ。

他のスポーツでも世界のトップクラスは増えているが、いずれも頂点に立つとなるとなかなか難しい。ボクシングのサラブレッドも、さまざまな要因があり、道のりは厳しいものがある。日本人の2世、3世が、父や祖父に続いて世界王者となる日はいつになるだろう。【河合香】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)