結びの一番を終えた後に行われる弓取り式。大銀杏(おおいちょう)を特別に結った序二段聡ノ富士(39=伊勢ケ浜)が土俵に上がるが、締める化粧まわしが6場所中、大阪だけ違う。いつもは日本相撲協会の物だが、春場所だけは関西の維持員で構成する「東西会」から贈られた物を使う。

 茶色の陣羽織を着て東と西のたまり席に座ることから東西会という。32年1月に、62人の関取のうち、待遇を不服とした48人が協会を脱退し、主に関西で興行を始めた「春秋園事件」で、戻るように説得したのが東西会の前身の十日会。それが実らなければ一時廃止となった大阪場所は、どうなっていたか分からない。

 37年に「大日本相撲協会 東西会」となって80周年の今場所、化粧まわしは20年ぶりに新しくなった。

 会には「カメラ、ビデオ、携帯の持ち込み禁止」など数項目の「観覧規定」があり、最後に「弓取り式が終了するまで絶対に座を立たぬ事」とある。一般客にもお願いしているという。川井敏彦副会長は「弓取り式までが大相撲ですから」。新横綱に沸く浪速の春だが、横綱の取組までが相撲、ではない。【今村健人】