まだ暑い午後3時過ぎ、朝日山親方(元関脇琴錦)は正面入り口でチケットのもぎりに汗していた。スピーディーな“F1相撲”で2度の平幕優勝を飾った元花形力士がお客さんを笑顔で迎えていた。協会の仕事は大変だ。だが、部屋の長としてはもっと大変だ。

 昨年6月1日付で尾車部屋から独立し、朝日山部屋をおこして1年。まず頭を悩ますのは弟子集め。「車の運転中でも“有望な子、いないかな”と探しちゃう」。東序ノ口朝日錦はコンビニのレジ打ちをしている時に声をかけた。西序二段の松沢は自分の息子。この日の新序出世披露で紹介された高木城治(21)は5人目の弟子。テレビ番組製作会社でバラエティー番組のADなどをしていたが「努力が結果に出る」と転職を決め、1カ月前に入門希望の電話をしてきた。「彼はまじめだし、いいですよ」と大歓迎した。

 「ただ集めりゃいいってもんじゃない。家族のような部屋にしていきたいから、集めても15人かな。ちゃんとしつけもしなきゃいけないし…」。時代を考え、朝稽古は午前8時からだったが、早めようかと考え中。「今も7時50分に起きるやつがいる。どうしたもんかね」。汗だくの思案顔に充実感が漂った。【加藤裕一】

 ◆新序出世 日本相撲協会は名古屋場所8日目の16日、ブルガリア出身のベンチスラフ・カツァロフ改め虎来欧(鳴戸)や埼玉大から入門した庄司(武蔵川)ら新序出世力士6人(再出世1人)を発表。秋場所(9月10日初日、東京・両国国技館)から番付にしこ名が載る。