今年は関取として土俵に上がった。1月19日は横綱大鵬の命日。
直近2年のこの日は幕下で相撲を取っていた孫の西十両11枚目王鵬(20=大嶽)は、大翔丸にはたき込まれて7敗目。「2年前から命日の日にたまたま相撲があるが1番も勝てていない。今日こそはという思いがあった」と悔しさをにじませた。
黒星が続く新十両の今こそ、耐え忍ぶ。9日目からの土俵入りは「忍」の文字が入った化粧まわしを使用。祖父が生前、好んでいた言葉だ。師匠の大嶽親方(元十両大竜)によると、この「忍」は大鵬が直筆した字を「プリント」したもの。化粧まわしを製作した知人に、希望の漢字1文字を問われて王鵬が選んだ。「よく(祖父が)サインにも書いていた字。耐え忍んで、稽古も自分のためになることはきつい。それを忍んでやっていかなければということ」と王鵬。自分なりに「忍」の意味をかみ砕く。
勝ち越しに向けて後がない状況となったが、相手の引きを怖がらず、前に出る相撲を貫いている。「引いて負けるより、前に出て負けた方が星もついてくる」。信念を持って、天国から祖父が見守る土俵に立っている。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)