WBC世界ライトフライ級王者拳四朗(25=BMB)が、自称「北斗百烈拳」で2度目の防衛に成功した。挑戦者の同級11位ヒルベルト・ペドロサ(25=パナマ)に見事な連打を見舞い、4回1分12秒TKOで下した。元東洋太平洋ライトヘビー級王者の父、寺地永会長(53)が22年前に右手甲骨折から奇跡的な逆転勝ちを飾った会場で、3度目の世界戦にして初のKO勝ち。初のテレビ生中継で全国に存在感を見せつけた。

 あたたたたっ~! 北斗神拳伝承者の雄たけびが聞こえそうな猛ラッシュで、拳四朗が挑戦者を沈めた。4回。右フックにペドロサがぐらついた。「これ、いけるんちゃう?」。瞬時に思い、一気に攻めた。ロープに詰め、左右の連打14発を見舞った。逃げる相手を追い込み、最後はボディー連打でTKO防衛だ。

 初のテレビ生放送、3度目の世界戦で初のKO。両手でVサインし笑顔でテレビカメラに近づいた。リングでマイクを手に「皆さん、見てますか~? 拳四朗で~す!」「あれ、実は北斗百烈拳です!」と叫んだ。

 横浜文化体育館は「パパ」と呼ぶ父、寺地会長が「左」の伝説を刻んだ場所。95年9月7日にライトヘビー級10回戦で1回にダウンを奪われ、2回には頭を殴って右拳を骨折した。それでも左手1本で逆襲。3-0判定勝ちで、次戦の東洋太平洋同級王座奪取につなげた。「ほんまに左手だけでした」と、とぼけて笑うパパは身長189センチ。背は25センチも低い拳四朗だが、勝負強さは負けない。パパの立派な伝承者だ。

 10月22日のV1戦から中2カ月7日。プロ全12戦で4~5戦目の中2カ月1日に次ぐ短いスパンに、ハプニングもあった。17日の公開練習前に風邪をひき、39度近い高熱にうなされた。「インフルエンザっぽかった。もしホンマにそうやったら、メンタルやられる」と検査は受けず、点滴だけで立ち直った。

 普通のボクサーは「強くなりたい」と思い、拳四朗は「有名になりたい」と思う。ハングリー精神でなく、目立ちたがり精神で世界王者になった。控室のインタビュー中「フォロワー、増えてへんかな?」とスマホをチェック。ツイッターが2780から3033、インスタグラムが2851から3030になったことを確認すると「200か~。でも、増えて良かったです」。こんな世界王者、ほかにいない。次戦は前王者ガニガン・ロペスとの指名試合。有名になりたいから、勝つだけだ。【加藤裕一】