難関とされるミドル級で日本人初防衛を果たした村田諒太(32=帝拳)には、絶対的な自信を持つ資質がある。それは「頭」。観察眼と記憶の蓄積に裏付けられたその必勝法に迫った。

<試合前>

 「アマ時代からやっていることで、まず相手の良さを見る。得意なパンチなど。それと弱いところを見る。シンプルにその2つ。良いところはもらってはいけないので対応する。じゃあ悪いところで特徴を探す。長いこと見ていればわかるんです」

 映像分析に注力する。今回で言えば、ブランダムラの長所は「フットワークの速さ」「右ストレートのかぶせからの左ジャブ」「序盤は右を振ってくる」、短所は「スタミナがない」。 的確な気付きは記憶が支える。自身のアマ138戦、プロ14戦は細部まで状況を思い出せる。他選手の試合は数千試合を見ているが、その蓄積が材料として生き、観察眼を生む。試合の解説でも、他人が気付かないわずかな変化に目がいく。「序盤よりガードがわずかに低い、とか。疲労でパンチが見えなくて、見たいから下げ始めるんです」。

<試合中>

 「いまの嫌がったと思った瞬間に、相手が一息つかない瞬間にいくとか。ちょっとしたことは工夫している。呼吸を読むというか、間を読むというか」

 ここにも観察眼が生きる。よく「プレッシャーをかける」という言葉を使うが、村田の解釈は「相手が嫌がっているということ。されることを嫌がっているかどうか」。これが抜群にうまい。「例えば息の使い方ですね。ボディーを打って効いたかは分からないが、呼吸が乱れ、その後の1アクションが少し遅れたり」。聴力も駆使し、プレッシャーのかけ時を逃さない。

 この日は「作戦は実行できた」と完封した。序盤の右はもらわず相手の長所であるフットワークはジャブで制した。そして、持続力が落ち、ガードが緩んだところを右で仕留めた。「頭でやっているから」。この日も、「頭」で勝ちを引き寄せた。【阿部健吾】