最強王者の歩みが止まった。IWGPヘビー級王者オカダ・カズチカ(30)が、挑戦者ケニー・オメガ(34)に敗れ、13度目の防衛に失敗した。IWGP史上初の時間無制限3本勝負。28分47秒で1本目を先取も、19分10分、16分53秒と連取を許し、合計64分50秒の死闘に敗れた。5月の福岡大会で歴代最多のV12を樹立したが、最強外国人と認める好敵手にタイトル戦では約2年2カ月ぶりの黒星。長期政権が終わりを告げた。

 崩れ落ちた。必殺のレインメーカー(短距離式ラリアット)を放ったオカダが、自らひざを折ってマットに倒れ込んだ。時間が合計60分にさしかかる。かつて見せたことのない憔悴(しょうすい)した姿で、目はうつろ。オメガのジャーマンスープレックスとの放ち合いに気力を振り絞ったが、最後は担がれて片翼の天使に沈んだ。極限の消耗戦の果てに「V13から新たな王者像を見せる」と誓った初戦で散り、無言で会場を後にした。

 先月に歴代最多防衛を遂げ、自ら対戦相手にオメガを指名した。60分時間切れ引き分け防衛となった昨年大会の2年越しの延長戦だった。だから無制限で勝負を決めたかった。一瞬のすきをついたエビ固めで取った1本目。そして2本目開始直後にレインメーカーをたたき込むまでは順調だった。ただ、オメガの無類のスタミナに上回られ始め、2本目を取られると3本目との休憩時間では大の字で立てなかった。

 15歳の春、大阪で闘龍門の入団試験を受けプロレス界への1歩をしるした。それから15年。2年前の6月11日、同じ大阪で始まった歴史的な防衛ロードに、V13での新たな1歩をしるすことはできなかった。【阿部健吾】