女子スーパーアトム級GP初代女王の浅倉カンナ(20=パラエストラ松戸)が“ツヨカワクイーン“RENA(27=シーザージム)を返り討ちにした。昨年末のGP決勝の再戦となったメインカードで3-0の判定勝ち。男子格闘技界の「神童」那須川天心(19)との交際も明らかになったばかりの若き女王が、共闘で勝利をつかんだ。

 勝利を喜び合いたい人は、リング下からずっと声を張り上げてくれていた。勝ち名乗りを受け、浅倉が向かった先には那須川がいた。「しっかり声は聞こえていました」。ねぎらうように頭を軽く手でたたかれると、会場からはさらなる歓声で祝福が届いた。

 「自分が強くなるスピードよりも、RENAさんの強くなるスピードの方が速くて、すごく焦りました」。昨年末、下馬評を覆して1回失神KOであこがれの先輩を下した。それから7カ月。対策を積んできた相手に苦しんだ。タックルを決めても、腕を取っても、寸前で逃げられる。逆に肘を顔面に落とされた。ローキックを受けた右ももには足跡が残った。ただ、折れなかった。レスリングを下地に17歳でプロデビューし、磨いた寝技でしつこく食らいついた。打撃にも臆せず、終始絡み続けた。3回には逆に肘を落とす強気も見せ、連勝につなげた。

 「声が聞こえる所にいてほしい」。那須川にお願いした。17年正月の食事会で意気投合して交際を始めた。ともに国内格闘技界で名前が知られるようになり、ディズニーランドのデートは帽子を深々かぶって1回だけ。同世代のカップルより制約はあるが、強さの追求で共鳴してきた。ジムは違うが、「心強いです。互いに高め合っているのを見てほしかった」。この日も「前蹴りくるぞ!」など、大きな助言が届いた。

 今でも試合前には夢を見る。「今回は船に何人か乗っていて、音を立てたら殺されるみたいな」。毎回恐怖の夢だという。心理は正直、それでも打ち勝ってきた。「RENAさんはあこがれですけど、でも、超えなきゃいけない選手で、今回の試合はものすごく複雑でした。勝ったからにはもっと上の選手とやり合えるように、壁を乗り越えてやっていきたい」。支え合いながら、戦い抜いていく。【阿部健吾】