キックボクシング界の「神童」那須川天心(20)が、パッキャオの前で力を見せつけた。

59キロ契約のキックボクシングルールで、ボクシング6階級制覇王者で現WBA世界ウエルター級王者マニー・パッキャオ(40)が推薦したフリッツ・ビアグタン(23=フィリピン)と対戦。パッキャオが見守る中、3回TKO勝利で、19年RIZIN初戦を制した。

目の前で見ているパッキャオに「強い」と言わしめた。パッキャオ推薦のビアグタンは何度パンチを当てても倒れない。初めて戦うフィリピン人ファイターのタフさに苦戦したが、最終3回に左ストレートがさく裂。パンチのラッシュと膝蹴りでコーナーに追いつめ、勝負をつけた。直後には、倒れているビアグタンに対し、前日計量でくらったドラゴンボール孫悟空の必殺技「かめはめ波」を発射。「やられたんで、やり返しました」とファンを楽しませることも忘れなかった。

試合後にはリングに上がったパッキャオと握手。「君、よかったね。強いね」と声をかけてもらった。「フィリピンの次期大統領になる(可能性のある)人。圧があった」とオーラを直で感じた。

実は、パッキャオから少なからぬ影響を受けてきた。空手からキックボクシングへ転向した小学6年生の頃、ボクシングのトレーナーにパッキャオの動画を見るよう薦められ、そのステップを学んでいた。

昨年大みそかに特別ボクシングルールで、ボクシング元5階級王者のフロイド・メイウェザーと対戦。世界が注目する中、1回TKOで敗れた。パッキャオからは「そのファイティングスピリットに敬意を表する」とたたえられていたが、今回見てほしかったのは、強い姿。「パッキャオさんに、キックボクシング面白いなと思わせたい」。その宣言通り、目の前で強さを証明した。

これでキックボクシング戦績は30戦負けなし。それでもさらなる進化を求める。約1カ月前からは肉体改造をスタートした。これまでやってこなかった筋力トレーニングに加え、食事改善にも着手。

「何食っても強い者は強いと思っていましたが、違った」

アスリート用に栄養バランスが考えられた弁当を摂取することで体脂肪が自然と落ち、体のキレが増した。「外国人とは骨格が違う。格闘家は楽に勝ちたい。体を作って、自分自身を高めていけば圧倒的な差を作れる」。ボクシングジムでのパンチのトレーニングも欠かさず、無敵の強さを求め続ける。

他人が「考えられないことをどんどんやっていきたい」という那須川にとって、あらゆるジャンルの格闘技を受け入れるRIZINは理想の舞台だ。昨年大みそかのメイウェザー戦は、敗れたものの世界にその名が広まるきっかけとなった。この日も「RIZINのおかげで世界の人に知ってもらうことができた」と感謝した。

「すごいっすよね。パッキャオもメイウェザーも(コナー・)マクレガーも自分のことを知っている。いい人生送ってますよね。濃密な展開が早いマンガだな、と思います」

誰も見たことのないマンガのような格闘家人生を存分に楽しむつもりだ。