IBF世界フライ級4位黒田雅之(32=川崎新田)が世界再挑戦に失敗し、令和第1号の世界王者を逃した。同級王者モルティ・ムザラネ(36=南アフリカ)のV2戦で6年ぶりに世界再挑戦。左ボディーを軸に最後まで攻めたが、的確なパンチをもらって0-3の判定負け。高1からアルバイト生活で、世界初挑戦失敗から挫折を乗り越えてきたが、入門17年目で41戦目の悲願達成はならず。日本人の世界挑戦は日本人対決を除いて7連敗となった。

黒田は打たれても打たれても攻めた。5回には左目上をカットし、終盤は右目周囲もはれ上がった。それでも最後まで攻めたが、ボディー以外の有効打を奪えず。6年ぶりの再挑戦に「下手くそながら、最後まで攻めて、力は出し尽くした」が、手数の多い王者の連打に屈した。

徐々に距離を詰められ、逆にジャブをもろにもらい、細かい連打を浴びた。「想定より拳1個分リーチが長かった。2回で右目がかすんだ。ボディーに持っていくしかなかった」。王者はボディーに効いた素振りもまったく見せず、実力差を認めるしかなかった。

13年の世界初挑戦は大差で判定負けし、その後も厳しい状況が続いた。新田会長が強制的に自腹で1カ月のメキシコ武者修行させたが現地で判定負け。再起後2度の日本王座挑戦にも失敗しながら、やっとつかんだ世界再挑戦の舞台だった。

12年には、井上尚弥のプロテストの相手で圧倒された。試合やスパーした田口良一、拳四朗、木村翔、田中恒成らも、追い越して世界へ上っていった。「自分にイラだった日々」を晴らすことはできなかった。

高1の03年に川崎新田ジムの開設を知って入門した。会員番号18はジム第1号プロの最古参。会長は一番弟子に「結果がすべても、前回と違って気持ちと手は出せた」。6年での進歩は評価したが「今後は体のことも考えて白紙」と話した。黒田は「今はからっぽ」と苦笑し、令和初の国内世界戦で散った。【河合香】