WBA世界ライトフライ級スーパー王者京口紘人(26=ワタナベ)が、同級1位久田哲也(34=ハラダ)を3-0の判定で下し、2度目の防衛を果たした。激しい打ち合いの中で地力の差を示し、来年予定する統一戦へはずみをつけた。

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冷静だった。勝負の12回。京口は「ちょっと逃げたろかな」と捨て身で突進してくる久田をかわし、笑った。相手はもう、足が止まった。あえて打ち合いに応じ、力強いパンチを出し続けて勝った。

2回に右のカウンターをもらい、ロープまで後ずさり。「効いた」が「これで振り出しに戻った」と焦らず、すぐ左のジャブで立て直した。9回には右アッパーに右フックをたたみかけ、ダウンを奪取。KOでの圧勝ではなかったが「自分の中でいいキャリアになった。気持ちのいい選手。強い選手だった」。タフな久田に感謝した。

8月末に行ったフィリピン合宿最終日。1階級上、フライ級の世界トップランカー、マグラモとの激しいスパーリングで肋骨(ろっこつ)の軟骨を折った。診断は全治約3週間。左耳の鼓膜も破れていた。帰国後、最初は大きく息を吸うだけで痛みが出た。9月中に回復したが、パンチをもらい続ければリスクはあった。「前回以上に意識して練習してきた」という防御で、ベルトとともに不安のあった肋骨も守り通した。

世界王者となって約2年。「引き出しを増やしていかないと」と今も研究は続く。刺激となるのは、同い年の3階級王者“モンスター”井上尚弥の存在だ。9月下旬、高級肉のコース料理をごちそうになり、年内に海外旅行に行く約束をした。京口が勝ち、井上が11月7日のワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)決勝でドネアに勝った際の“ダブル祝勝旅行”。強敵とぶつかる盟友に、バトンを渡した。

来年中のWBA王者カニサレス(ベネズエラ)や6度防衛中のWBC王者拳四朗との統一戦を見据える。「しっかり休んで。いつかファンが望む統一戦、ビッグマッチ、それがかなうように精進するだけ」。まだ道の途中だ。【高場泉穂】

◆京口紘人(きょうぐち・ひろと)1993年(平5)11月27日、大阪府和泉市生まれ。父が師範代の道場「聖心会」で3歳から空手を始める。12歳でボクシングに転向し中学1、2年時には大阪帝拳ジムで辰吉丈一郎から指導を受けた。大商大卒業後の16年にワタナベジム入りし、4月にプロデビュー。17年7月に日本最速となる1年3カ月でIBFミニマム級王座獲得。2度防衛した後、18年8月に返上しライトフライ級に転級。18年12月にWBAスーパー世界ライトフライ級王座を獲得し、2階級制覇を達成。161センチの右ボクサーファイター。

▽リングサイドで観戦した大阪府の吉村知事 ボクシングの試合を初めて生で観戦したが、非常に感動させてもらった。久田選手も激しく打ち合い、すさまじい戦いだった。最後は気持ちだったと思う。