女子プロレス団体スターダムが新型コロナウイルスの影響により後楽園ホールで初の無観客試合を行った。試合の模様はYou tubeで無料生配信され、最大同時視聴数約1万2000、再生回数はのべ6万7000にのぼった。

異様な光景だった。会場にいるのは、選手、スタッフ、取材者のみ。リングサイド、東西南北の四方に客の姿はない。選手らは声援がない中、ビデオカメラの向こうの視聴者を意識しながら、試合を行った。

メインではスターダムのアイコン”ことワールド王者岩谷麻優(27)が鹿島沙希(26)と対戦。途中、2人は場外乱闘へ突入。岩谷は南側観客席の最上段から鹿島に突き落とされ、35段を階段落ち。映画「蒲田行進曲」の名シーンを思わせる豪快な落ちを披露し、ネット上をにぎわせた。試合後岩谷は「観客がいないのは不安もあったけど、やってみたらすごい楽しかった」と語り、「コロナ問題が収束し、1人でも多くの方々に楽しんでいただきたい」と通常興行の再開を願った。

初の無観客試合に対し、選手、関係者の感想はさまざまだった。タッグマッチに出場した木村花(22)は「お客さまがいないと、ただ痛めつけられているような感じ。声援が1番の薬なのだと分かった」。木村とタッグを組んだジャングル叫女(28)も「できれば(今後は)なしがいい」と、やりづらさを語った。

会場で見届けたオーナーであるブシロード木谷高明取締役(59)は選手側の不安をくみとりつつも、「いろんな可能性が見えた。やって良かった」と評価。視聴者数が予想以上に多かったことから、「初めて見てくれた人もいたと思う」と前向きにとらえた。

この日は感染予防のため選手、解説者ら動画に写りこむ人以外はマスク着用必須。入場前には検温も行われ、37度未満に限り入場可能とした。今後、3月14日から22日までの5興行は中止。24日に後楽園ホール大会を予定しており、状況をみながら開催可否を決める。