日本ボクシング界のプロアマをけん引する「田中兄弟」が9~11日の3日間、山形・酒田市内などで合宿を行った。世界3階級王者で、現在はWBO世界スーパーフライ級1位の弟田中恒成(25=愛知・畑中)と、東京五輪フライ級日本代表の兄田中亮明(26=岐阜・中京教員)がトレーニングを公開した。東北から本拠地に帰省した以降も、来る一戦に向けて調整中だ。

 

合宿最後の練習メニューは遊佐町・西浜海水浴場での砂浜ランニング。青空の下で日本海の潮風に当たりながら、2人は1歩ずつ前に進んだ。「走ることがボクシングの基本」と恒成。同合宿では徹底した走り込みを実施し、陸上競技場やゴルフ場、羽黒山の山頂を目指して2446段の石段も登った。走行距離は1日約30キロを目標に、3日で約100キロを走破した。恒成は「モチベーションは落ちていないけど、1度リフレッシュして、スタートしたい思いがあった。とてもいい合宿になった」と充実した日々を振り返った。

同合宿に至った経緯は、以前から交流があった酒田市内にある「だるま寿司」の店主が、同店の80周年記念イベントのゲストで恒成を招待。また南海キャンディーズの「しずちゃん」こと、山崎静代(41)のボクシングトレーナーを務め、13年に亡くなった酒田市出身の故梅津正彦さん(享年44)が、恒成が所属する畑中ジムと交流があったこともきっかけとなった。同合宿は昨年に続いて2回目だが、今年が初参加の亮明は「人も温かくて、海も山もすごくいいところ。ご飯もおいしくて、夜におすしを食べることが楽しみだった」と人生初の酒田を風土や食でも満喫した。

コロナ禍でプロは7月から興行が可能となったが、恒成は2月に現階級へ変更して以降、試合はできておらず、亮明も東京五輪の延期が決まった。それでも恒成は「今はチャンピオンではない。まずは4階級制覇をしたい」。亮明も「目標は金メダル。来年に(同五輪が)開催してくれるのであれば、モチベーションは下がらない」と意気消沈はしていない。「4階級制覇と金メダル」。港町の期待を背に、2人は夢への挑戦を止めない。【相沢孔志】

 

◆田中兄弟の近況 弟恒成は今年1月31日、WBO世界フライ級王者を返上し、階級を上げて4階級制覇の意向を明かした。対戦相手には日本人初の4階級王者、WBO世界スーパーフライ級王者の井岡一翔(31)を希望。6月にはユーチューブ「たなちゃんねるKOsei tanaka」を開設した。兄亮明は3月20日、五輪開催国枠で出場する男子3選手の1人に選出された。