同級王者花形冴美(36=花形)が引き分けで2度目の防衛に成功し、引退試合を飾った。同級6位となる東洋太平洋同級王者松田恵里(26=TEAM10COUNT)の挑戦を受け、0-1(93-97、95-95×2)のドローで王座防衛となった。

序盤からサウスポーの松田から左アッパーやワンツーなどで攻められたものの、中盤以降から接近戦からのフック連打などで追い上げてV2防衛。花形は「悔いのない試合。5度目の世界挑戦で王座を奪い、思い返せば苦しいことが多かった。人に恵まれたボクシング人生です」と涙ながらに感謝の言葉を口にした。

引退試合日となった3月18日は母吉本知子さんの64歳の誕生日だった。ボクシングのために大学も中退していた経緯もあり、花形は「何の運命か母の誕生日。苦しい時に支えてくれた。この母に生まれて良かった。母も『やっと辞めてくれる』とほっとしているみたいです」と世界ベルトを肩に掛けて感謝の言葉を口にした。

19年11月、日本ボクシングコミッション審判員の岡庭健氏と結婚した花形は、既に引退後のプランも勧めている。「子供も欲しい。主人は(ボクシングを)辞めて欲しいと思っていて、それを押し切ってやっていたので」と説明。さらに小学校教員になるため、昨秋から通信制の大学にも通い始めている。来秋には卒業見込みで、教員試験に合格すれば23年4月から教職に就くことが可能。「(学校は)子供たちが主役なので個性を尊重していけるような教員になりたい。会長から学んだ『継続は力なり』を子供たちに教えたい」と早くも気持ちを切り替えた。

師匠となる元WBA世界フライ級王者の花形進会長(74)は「俺は(世界王者時代に)防衛できなかったから立派だった。防衛は難しいのに2回も防衛したんだから。チャンピオンのまま引退するなんて、こんな格好いいことはない」とねぎらっていた。