WWEに参戦中の里村明衣子(41=センダイガールズ)が6月10日、NXT UK女子王座を獲得した。

WWEと言えば米プロレス団体だが、里村は英ロンドンを拠点にWWEレスラーとして活躍している。所属するNXT UKとは? 「WWEの世界」の第6回は、里村が女子の頂点に立ったNXT UKが存在する理由に迫る。

◇  ◇  ◇  ◇

ロンドン市内をバックにNXT UKベルトを掲げる里村の姿は、実に印象的だった。同王座を649日間も保持する最長記録を更新していた絶対王者ケイ・リー・レイ(28)を2度目の挑戦で撃破。「私の人生のハイライト」という気持ちが全身から漂っていた。女子王者としてクローズアップされているが、WWEとの契約はコーチ兼務。NXT UKの選手を育成する立場でもある。

18年に発足したNXT UK所属のレスラーたちは「WWE UKパフォーマンスセンター」と呼ばれる道場でトレーニングしている。19年1月にロンドン市内にオープン。WWEにとって米国外で初めての専用施設だ。WWEの掲げる世界戦略の目玉の1つとして設置され、5200平方メートル(約200坪)の施設にトレーニング用リング2つ、筋力トレーニングマシンなどの機器、映像コンテンツ制作用のエリアも整えられている。

この道場からNXT UK王者ウォルター(33)、現ロウ女子王者リア・リプリー(24)、元NXT UK女子王者トニー・ストーム(25)らが米国も拠点として活躍中。欧州でレスラーを育成し、米国に届けるシステムが確立しつつある。大会自体はコロナ禍のため、昨年3月後半から9月前半まで約半年近く大会が中断。英国でWWEを放送するBTスポーツの協力で特設スタジオが組まれ、9月後半から無観客で大会が再スタートした。

NXTの責任者でWWEのCOOとなるトリプルHが「NXT UKのスーパースターたちに米フロリダ州オーランドにあるWWEパフォーマンスセンターと同じく世界レベルのコーチングと育成プログラムを提供することができる」と言い切るほどの設備が整っている。UKパフォーマンスセンターには、スタート時から30人以上のレスラーが所属。今年1月からWWE世界戦略の拠点を任された里村の指導者としての手腕も、WWEが誇る最高設備の1つに組み込まれている。女子王者として、そしてコーチとして、里村のリング内外での輝きが今後のNXT UKを担うと言っていい。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/連載「WWEの世界」)