GHCヘビー級王者・丸藤正道(41)が、杉浦貴(51)を破り、初防衛に成功した。

キャリア23年目の丸藤と21年目の杉浦。苦しい時代からノアを支えてきた両者の戦いは、前哨戦同様に序盤から読み合いが続いた。その後は杉浦のペースに引き込まれ、リング上でも場外でも痛めつけられた。「本当にきつかった。わずかな差だった」。五輪予選スラムを食らったが、本能だけで返した。最後は延髄虎王、虎王・零とたたみかけ、ポールシフト式エメラルド・フロウジョンを決めて制した。

勝利後には握手を交わし、花道を引き揚げる杉浦に「ありがとうございました。21年目のこれからもよろしくお願いします」と深々と一礼。「彼と21年。辛い、苦しいことの方が多かった。耐え続ければ、そういう思い出もいつか笑える日が来ると思って、信じてやっている」と振り返った。

今回、杉浦が持つGHCナショナルのベルトは要求しなかった。挑戦表明を受けた13日の対決では敗れており「負けている身分なので。ヘビー級のベルトに集中したい」と、ナショナル王座の要求は控え、2冠の思いを断ち切った。杉浦も「(2冠は)全く意識していない」と同じ思いでリングに上がっていた。

丸藤は、6月6日に58歳武藤に勝利し、ヘビー級王座を奪取。昨年からノアに参戦、今年GHCヘビー級王座に輝き、頂点に君臨し続けていた武藤にあこがれと嫉妬を抱き続けていた。「武藤さんがベルトを取った時から挑戦したいと思っていた。刺激にならないとおかしい」。巡ってきたチャンスをものにし、王者に輝いたが、試合後はムーンサルトを披露した武藤の方が盛り上がっていることに気付いた。「学ぶものはまだたくさんある。伸びしろがある王者としてこれからやっていけるなと」。王者になっても、おごることなく、貪欲にまい進し続けてきた。

試合後には観戦していた桜庭が「弱点が見えた」と話していたことを聞き「俺は弱点だらけだ。強い桜庭とやりたい。決定でいいよ」と次の防衛戦での対決を示唆した。ノアの副社長として団体を引っ張る王者は簡単にベルトを渡すわけにはいかない。「若い、いい選手が育ってきた中で、俺たちは前に出てノアを守ってきた。ノアが変わる今こそ、もう一踏ん張りする。もう少し(ベルトを)巻かせてくださいよ」。強い王者の姿を見せ、防衛回数を重ねて、ベルトの価値を上げていく。