異色の新潟県出身ボクサーが沖縄でプロデビューする。北越高OBの皆川直輝(29=平仲)が10日、沖縄・石川多目的ドームでの6回戦(契約体重75キロ)で甲斐斗志広(36=宮崎ワールド)と対戦する。北越、日大で国体優勝とアマのトップで活躍。大卒後に引退し、起業するなどビジネスマンとして活動していたが、6年ぶりにプロに舞台を移し復帰。地方を基盤に世界を目指している。

試合が近づく皆川には手応えがある。対戦相手の甲斐は21戦の戦歴を持つベテランだが「自分が打って、相手には打たせない」。北越高、日大で国体優勝。大学1年から3年連続で全日本選手権準優勝とオリンピック(五輪)を目指せる位置まで上った力がよみがえる感覚がある。

9月中旬から元東洋太平洋ウエルター級王者の長浜陸(30=引退)とスパーリングを重ねた。3月にプロライセンス(B級)を取得後は生命保険販売促進の業務をした後に平仲ジムで練習。大学卒業を区切りに1度、ボクシングを終えている。6年の空白を埋めるように体をいじめ抜いた。

昨年11月に夫人の実家のある沖縄に移住。大学の先輩で元世界ジュニアウエルター級王者の平仲明信会長(57)が主宰する平仲ジムに顔を出すうちに火がついた。「練習生に世界を目指そうという空気が薄かった。ボクシングができる感謝もあまりなかった」。

平仲会長、元世界ジュニアフライ級王者の具志堅用高氏(66)らボクシングの世界王者が英雄視される土地柄。ボクシングが盛り上がれば地域が盛り上がる。競技にとって恵まれた環境、生かさない手はない-と平仲会長に進言した。その時に言われた。「皆川が手本を見せてくれないか」。自分がやることで空気が変わるならと覚悟を決めた。

大学卒業後、生命保険会社に勤務。1年目で400件の契約をまとめるなど同期250人の中でトップの営業成績を残した。その後はスーツブランドの経営に携わるなど実業家として活動。何かをやってみせる実行力には自信がある。6月に29歳になった。いずれは「新潟の役に立ちたい」と言う。「新潟の人は自分たちの良さを宣伝するのが得意ではなさそう。そこを手助けできるようになりたい」。そのために、まず自身のネームバリューを高める。「35歳まではやる。そこまでに世界タイトルに挑戦したい」。地域を変える礎になるための1歩を踏み出す。【斎藤慎一郎】

◆皆川直輝(みながわ・なおき)1992年(平4)6月18日生まれ、新潟市出身。北越高2年からボクシングを始める。3年時の国体ウエルター級で優勝。日大に進み、1年の時に台北市杯国際トーナメント優勝、2年で国体優勝。全日本選手権は大学1年から3年まで準優勝した。アマ戦績は87戦70勝(36RSC)17敗。176センチ。