ボクシングWBA世界ミドル級スーパー王者村田諒太(36=帝拳)が9日、さいたまスーパーアリーナで世界的スターのIBF世界同級王者ゲンナジー・ゴロフキン(40=カザフスタン)との2団体王座統一戦に臨む。

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19年12月の初防衛戦以来、2年4カ月ぶりとなる久しぶりのリング。さらに欧米で大人気のミドル級王座統一戦となる注目のファイトだが、テレビ地上波の中継はない。スポーツのライブ配信に新規参入する日本のAmazonプライム・ビデオの第1弾として組まれた。

既に海外のAmazonプライム・ビデオではスポーツ中継がスタート。英国でプレミアリーグ、インドでクリケット、オーストラリアでラグビーをライブ配信し、人気を博している。昨年11月、同社のジャパン・コンテンツ事業本部長となる児玉隆志氏は「その国でもっとも人気のあるキラーコンテンツをライブ配信している。日本では何が喜んでもらえるのか。ずっと考えて機会を待ち続けました」と解説。それが日本ボクシング史上最大規模の興行、村田-ゴロフキン戦のタイミングと合致した。

さらに今年3月、児玉氏は「(村田-ゴロフキン戦の配信を)発表させていただき、SNSを含めてポジティブな声をいただきました。プライム会員で良かったとの声が多かった。これを機に入会しようとの話もあり、プライム・ビデオでボクシングが見られるのかという好反応もあった。日本ライブ配信でボクシングを選んで良かった」と反響の大きさを喜んだ。

これまで日本ボクシング界は世界クラスの選手を育成した有力ジムがテレビ局とタッグを組み、地上波中継を実現してきた。しかし1試合で10億円以上を稼ぐミドル級最強王者、そして億単位の報酬を受け取る「日本の宝」村田の王座統一戦には資金力が必須だった。地上波中継の予算にも限界はある。今回の両者の報酬は合計で20億円超と推定。この2年間、コロナ禍の入場者制限などによる収益減で興行主の資金にも限界があった。今回は資金力十分の配信サービスという形でしか実現しない興行だったと言える。

米国では世界的スターの高額ファイトマネー捻出、ビッグマッチ実現のためにPPV配信が長らく定着している。今回の村田-ゴロフキン戦は海外でDAZN、日本はAmazonプライム・ビデオが配信。世界200カ国で視聴可能となる。DAZNがゴロフキン、Amazonプライム・ビデオが村田のファイトマネーを担当することで高額報酬の課題をクリア。配信サービス2社の「異例タッグ」でビッグマッチの日本開催が実現した形だ。

既にAmazonプライム・ビデオは第2弾も発表している。6月7日、さいたまスーパーアリーナで開催されるWBAスーパー、IBF世界バンタム級王者井上尚弥(大橋)がWBC世界同級王者ノニト・ドネア(フィリピン)との3団体王座統一戦だ。既に井上は昨年12月、自身のスポンサー、ひかりTVでPPV配信。予定の件数を超え、井上サイドにボーナスも支払われる成功を収めた。

ただ国内ボクシング関係者は「村田、井上の両選手以外の世界王者は、ジム側からテレビ局に(中継を)お願いしなければいけない立場」と明かす。現状は世界から注目される人気ボクサーのみが実施できる配信サービスによる興行。村田、井上という抜きん出た存在が、日本ボクシングの放送手法に新たな波を起こしていると言っていい。