前WBO世界スーパーフライ級王者で現WBA世界同級6位の井岡一翔(34=志成)が世界王座に返り咲いた。

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試合前にいろんな報道があり、前日計量で王者が体重超過により失格。予想外のことが続いて、どんな試合内容になるのか心配していたが、ふたを開けてみたら、両選手とも持ち味を出し切った、白熱したいい試合だった。

特に井岡には1回から“倒してやろう”という気迫を感じた。攻撃的に戦った分だけ、危険なタイミングでパンチを浴びるシーンもあったが、気持ちが上回っていた。いろんな思いがつまっていたのだろう。一方のフランコも約3キロもリミットをオーバーして体調が悪いのかと思ったが、攻撃力は相変わらずで、打たれ強かった。

計量も、試合前もフランコが約3キロ重かった。これはものすごい差。見た目でも体格差を感じた。井岡も相手のパンチの重さを感じていたと思う。その中で光っていたのが、打ち合いの中、冷静に左ジャブを上下に打ち分ける技術。基本のパンチでダメージを与えるものではないが、相手の堅いガードを崩して、次の攻撃につなげていた。これが百戦錬磨のうまさなのだろう。

34歳だが衰えている感じはまったくないし、スタミナも最後まで切れていなかった。これから先も、まだまだいけると思う。(元WBC、WBA世界ミニマム級王者)