4団体統一スーパーバンタム級王者井上尚弥(31=大橋)が防衛(WBAスーパー、IBF初、WBC、WBO2度目)に成功した。元世界2階級制覇王者のWBC世界同級1位ルイス・ネリ(29=メキシコ)の挑戦を受け、6回TKO勝利。日本人初となる4団体統一王者としての防衛を成し遂げた。

試合後、リング上で「ここ東京ドームで34年ぶりの日本人メイベント。自分自身すごくプレッシャーがあったんですけど、こうして皆さんの力が僕のパワーになりました。本当にありがとうございました」と述べた。

1回に喫したまさかのキャリア初ダウンについても「皆さん、1ラウンド目のサプライズ、たまにはいかがでしょうか」と余裕たっぷりに振り返った。

ただ、真剣な表情となりダウンの際に笑みをみせたシーンには「やっぱりボクサーということで、そういうシーンというのは自分自身燃え上がるところがあるので、非常にハイテンションで試合をしてました。日本、東京ドームでルイス・ネリと試合できたことにほんとに感謝いたします。ありがとうございます」と振り返った。

90年2月の元統一ヘビー級王者マイク・タイソン-ジェームス・ダグラス(ともに米国)戦以来、約34年ぶりとなる東京ドームでのボクシング興行で、日本人初のメインイベンターを務めた。今や世界ボクシング界から注目される井上が、所属ジム設立30年、自身の世界王座獲得(WBC世界ライトフライ級王座)から10年という節目で迎えた大一番を勝利で飾った。

井上は「自分が初めて世界王者になって10年。東京ドームで試合ができるのは何かの縁だと思う。ジム設立30年に東京ドームで試合できることも感慨深い。必ず成功させなければいけないという思いは、いつも以上に感じる。自分自身に期待したい」と胸を躍らせ、東京ドームのリングに立っていた。

挑戦者は、17年8月と18年3月の2度、元WBC世界バンタム級王者山中慎介と対戦したネリだった。山中との2戦ではドーピング違反と体重超過で騒がせ「悪童」と言われていた。今回はWBC規定の事前計量(1カ月前、14日前、7日前)をクリアし、前日計量もリミット(55・3キロ)よりも500グラム少ないウエートで1発クリア。井上戦決定後も5カ月間かけて母国メキシコではなく、米テキサス州エルパソで調整。5、6度のドーピング検査を受け、過去にない「リアル」ネリとして来日してきた。

2度目の山中-ネリ戦は会場で視察していた井上だったが、冷静そのもの。「今回の戦いは自分対ネリ。過去の因縁を持ち込まないように戦う」と集中力を研ぎ澄ませた。4日の公式会見でネリと握手したかと思えば、5日の前日計量では20秒間、至近距離によるフェースオフ(にらみ合い)で火花を散らした。「もう駆け引きは始まっている」と戦闘モードに入っていた。

興行をプロモートした所属ジムの大橋秀行会長(59)は「今回の東京ドームは新たなスタート。またドームで興行開催する可能性はある。私の頭の中には、いろいろな選択肢、構想がある」と言葉に力を込めた。今夜の東京ドームでの防衛成功は、井上の新たな伝説の始まりといえるファイトとなった。

◆ラウンドVTR

1回 開始18秒に井上尚が豪快な右フックで会場沸く。ネリも遠くから一気に踏み込んでのワンツーを振るう。1分49秒過ぎにネリの左フックがカウンターでさく裂し、井上尚がプロ初ダウンを喫する。立ち上がり防戦となるが、踏ん張って初回を終了した。日刊採点は井上尚弥8-10ネリ

2回 井上尚がジャブを突いて試合を作り直していく。足を止めて探り合うように拳を交錯させていく。井上尚がボディーを決めるなど徐々にペースをつかんだ2分過ぎに、ネリが飛び込んできた所に左を合わせてダウン奪取。劣勢から一気に盛り返した。日刊採点は井上尚弥10-8ネリ

3回 井上尚は相手のジャブをさばきながら、要所で強打の右を振っていく。ネリが転ぶ場面もあったがスリップの判定。不用意に飛び込んでのダウンの影響か、ネリは慎重さを感じさせる。残り30秒を切ってから井上尚のワンツーが大きな音を響かせた。日刊採点は井上尚弥10-9ネリ

4回 井上尚がワンツーを軸に組み立てる。1分20秒過ぎに顔面をかすめるパンチを受けると、グローブで顔をなでるしぐさから強烈な右ストレートを放った。ネリの大振りの左を見切るようにステップを切りながら、3分間を終えた。日刊採点は井上尚弥10-9ネリ

5回 トレーナーの真吾さんから「あわてる事はない」と送り出された井上尚。頭から突っ込んでくるネリをステップでかわしながら左のジャブを打っていく。残り40秒でロープを背負った状態から鋭い左フックでこの日2度目のダウンを奪った。ネリは中間距離で打開点を見いだせず、強引さが目立ってきた。日刊採点は井上尚弥10-8ネリ

6回 井上尚が前にでる展開が続く。ネリは防戦一方になり、後退が目立つようになる。2分過ぎに連打で押し込むと、最後はカウンターで右一閃(いっせん)。6回TKO勝利を飾った。日刊採点は井上尚弥10-8ネリ

井上尚弥が日本人初4団体統一王者として防衛成功 ネリを6回TKO/ライブ詳細

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