<K-1甲子園>◇29日◇ディファ有明

 中部地区3位の平塚大士(安城農林1年)が、主催者推薦で出場したV候補の1人、藤鬥嘩裟(つかさ、勇志国際1年)を2-1の判定で破る金星を挙げた。初の単独開催となった同大会にも気後れせず、相手の懐に飛び込んでパンチを連打。05年11月に亡くなった母ひろみさん(享年39)にささげる8強進出に、リングで大粒の涙を流した。

 「青、平塚!」。3人目の判定結果が告げられた瞬間、平塚の目から大粒の涙がこぼれ落ちた。HIROYAと同じく「K-1

 甲子園」ビッグ3に数えられる藤が相手。さらに164センチと小柄な平塚に対して藤は173センチ。だが、そんな強豪にも気後れすることなく「自分のやって来たことを出すだけだった」と、初回から相手のスキを見ては懐へ飛び込んで行く。高校生らしいひた向きなファイトスタイルが、名前でも体でも上の相手を破る金星を呼び込んだ。

 リング上で号泣したのにはわけがあった。中学1年だった05年11月、最愛の母ひろみさんが脳腫瘍(しゅよう)で他界。「墓前にいい報告をしたかったんで…」。小差の勝利後にはセコンドから母の遺影を手渡され、リング上を1周。「お母さん、ありがとう」。また泣いた。

 小学2年時に「何か打ち込めるものを」という父淳さん(42)の勧めで、空手を始めた。そんな父は、「夏休みにはランニングやダッシュなんかの練習に付き合ってくれた」。またこの日は「試合はほとんど見に来たことなかった」という姉渚さん(19)も、はるばる愛知県から応援に駆けつけた。家族みんなの支えがあったからこそ「大舞台で力を発揮できました」。また声を詰まらせた。

 これで10月1日開催の準々決勝進出が決定。「まだ先のことは考えられないです。でも次も精いっぱい頑張って、いい試合をしたい」。クリクリした丸刈り頭が似合う15歳の少年は、最後に最高の笑顔を見せた。【山田大介】