ロンドン五輪ボクシング男子ミドル級金メダリストの村田諒太(27=東洋大職)が2日、大騒動の末にプロ転向の意思を表明した。この日、日本アマチュアボクシング連盟が大阪市内で理事会を開き、引退か現役続行、さらにプロ転向を巡っての村田の行動が一貫性を欠くなど礼節欠如の理由で、アマ選手としての引退勧告を決議した。史上初の勧告を受けた村田は急きょ、同連盟の山根明会長(73)と会談して全面謝罪。一件落着し、その後の会見でプロ転向の意思を明らかにした。

 日本ボクシング界に48年ぶりの金メダルを運んできた村田が、すったもんだの末に「プロに行きたい気持ちは確かにある」と、プロ転向の意思を表明した。

 まさにドタバタの表明劇だった。この日午後2時、日本アマチュアボクシング連盟が大阪市内で理事会を開き、村田への引退勧告を満場一致で決議していた。同連盟の引退勧告は初めて。勧告理由は、国際連盟(AIBA)が独自に設立するプロ団体(APB)への参加要請を、村田が現役引退の可能性を理由に断ったこと。その一方で、全日本社会人選手権出場へ意欲を見せたり、独自にプロ転向に動くなど行動に一貫性を欠いたためという。

 理事会を終えた山根会長は「AIBAにも顔が立たない。(村田が)プロに行くことは構わないが『プロ転向を他には言ってない』と話しておきながら、東京では(その動きを)ほとんど知っていた。愛情を持っている分、憎しみも倍になっている」と怒りの表情で話した。

 その約5時間後に事態は動いた。連盟の動きを知らされた村田は、午後9時すぎに山根会長と大阪市内で急きょ会談。「ご迷惑をお掛けしてます。申し訳ございません。金メダルを取れたのも会長のおかげです」と謝罪。引退勧告についても「僕は連盟の指示に従うだけ」と受け入れる考えを示し、すぐに両者は和解した。アマ選手として引退勧告を受けても、プロ転向に支障はない。だが、これまで世話になってきた同会長へ村田なりのケジメを示した形だ。プロとアマの関係悪化も防ぎたかったはずだ。

 プロ転向の意思を公式に示したことで、今後は村田へ多くのジムから本格的なオファーが舞い込みそうだ。既に東京の三迫ジムから「話は来ました」という。ただ「手を挙げてくれたことはありがたく感じるが、まだ話もしてない」と、本格交渉までは進んでいないという。金メダリストの村田には、重量級世界王座獲得への大きな期待がかかることも確かだ。それだけに、今後は慎重にプロ入りへの課題をクリアしていく。

 「プロとしてやるのなら勝つことが最低条件。一番強くなる環境、みなさんに応援される状況を作らないと。そうしたことが決まらないと、どこのジムに行くとかは決められない。決めるべきものが決まらないのであれば、はっきりいってプロに行かなくてもいい」。求める最高のボクシング環境が整ったときに初めて、プロボクサー村田諒太の第1歩がスタートする。【木村有三】

 ◆村田諒太(むらた・りょうた)1986年(昭61)1月12日、奈良市生まれ。伏見中1年でボクシングを始める。南京都高で高校5冠。東洋大では04年の全日本選手権ミドル級で初優勝。08年に1度は引退するが、09年春に復帰。11年世界選手権では日本人過去最高の銀メダル。ロンドン五輪では日本人48年ぶりの金メダル。右ファイター。家族は夫人と1男。182センチ、77キロ。