大相撲の夏巡業が10日、新潟・五泉市で開催され、大関稀勢の里(29=田子ノ浦)が若手に雷を落とした。朝稽古中に日大出身で新入幕の英乃海を呼び出し、土俵下で数分間、時折小突きながら鬼の形相で説教した。「いろいろ相撲界のことを教えてあげましたよ」と話す姿は、まるで風紀委員長。「角界の風紀は俺が守る」と言わんばかりの熱血指導だった。

 英乃海は腰痛持ちで、途中で申し合いをやめて土俵から引き揚げた。その際、稽古場に残っている稀勢の里にあいさつしなかったのが痛かった。角界では番付が物を言う。ぶつかり稽古でも指名して15分間胸を出した稀勢の里は「大学出身ですぐに関取になると、知らないことも多いと思う。部屋では教えてもらえないこともある」と説明した。

 稀勢の里自身も新十両のころ、部屋の垣根を越えて指導を受けたことがある。「朝青龍関。稽古場に来るのも早かったからねえ。朝から震えてましたけどね」と懐かしんだ。尾車巡業部長(元大関琴風)も「土俵が締まる。ああやって強くなっていく」と期待した。夏巡業は29日まで続く。稀勢の里は「育てるのも仕事の1つ。それが関取衆の役目」と目を光らせた。【桑原亮】