新弟子は元有望ラガーの用心棒! 大相撲初場所(10日初日、東京・両国国技館)の新弟子検査が6日、相撲診療所で行われ、東福岡高ラグビー部出身の古閑宗市(20=佐渡ケ嶽)が受検した。高校ではケガに泣いたが、卒業後は博多中洲のナイトクラブでガードマンなどを務めて学費をためた苦労人。今度は角界で暴れる。13人全員が体格基準をパス。合格者は内臓検査を経て初日に発表される。

 柔和な表情からは想像がつかない。古閑は、中洲の夜に暴れる客を抑え込んでいた。「高校卒業後、会社を経営する親戚の専属運転手と、ナイトクラブのガードマンをしていました。酔って暴れるお客さんを外に出したり、ケンカを止めたり」。182センチ、151キロの体格に見合った武闘派…かと思いきや、自らは謙遜する。「気が小さいので、平和的な解決を、です」。にやりと笑った。

 そんな仕事をこなすほど力には自信がある。中1でラグビーを始め、強豪の東福岡高に進学。最前列のプロップを務め、高2時に握力は左右ともに「110キロ」を計測。「びっくりすると力が入って割れたことがあるので、コップを持つのが怖かった」。130キロの体で50メートルを6秒5で走ったという。高1で世代別の日本代表候補にも名前が挙がり、日本代表も夢見ていた。

 だが、中3でケガした右膝の影響で、思うプレーができなくなった。将来はメンタルトレーナーになろうと決意。ナイトクラブで“用心棒”を務めたのは大学の学費を自ら稼ぎ、母や姉、祖母と暮らす家計を少しでも助けるためだった。

 ただ、入れ墨の男5人に囲まれる危機などを乗り越えてきた矢先、親戚が琴奨菊と知人だった縁で入門を決意した。「ラグビーが途中でできなくなって悔しかった。挑戦したかった」。

 ケガで部活から離れたとき、1学年先輩で日本代表WTB藤田慶和(現早大)から「お前とラグビーがしたい」と声を掛けられた。「藤田先輩のように自分も有名になって、ケガであきらめなかったことを分かってもらえたら」。新たな夢を見つめた。【今村健人】