いよいよ、居反りが出るぞ! 日本相撲協会は30日、エディオンアリーナ大阪で夏場所(5月8日初日、東京・両国国技館)の番付編成会議を行い、宇良(23=木瀬)の新十両昇進が決まった。所要7場所での昇進は史上4位のスピード記録になる。宇良は、プロで1度も出していない得意技・居反りの“解禁”を示唆。母校関学大、京都・鳥羽高から化粧まわしを贈呈されることも内定した。

 楽しみな大技を目の当たりにする時が、近づいてきた。宇良は、居反りについて「十両の方が出しやすい」とはっきり言った。師匠の木瀬親方(元前頭肥後ノ海)も「十両は相手の体がでかくなる。宇良は中に入るから、やりやすくなる。その体勢になったら、やると思う」と予想した。

 居反りは、相手の懐に入って両手で膝を抱えて、上体を反らして後方に投げ飛ばす大技。十両以上では決まり手が発表された55年夏場所以降の約60年間で、わずか3度しか出てない。だが、中学までレスリング経験のある宇良は、アマ時代から居反りが得意。昨年春場所の初土俵後は1度も出していないが、それは基本の「押し」にこだわっていたから。「封印したわけじゃない。たまたま出なかっただけ」。稽古場では1年間で3度成功させており、いつ出てもおかしくない。

 体は小柄でも人一倍の根性がある。高校入学時は152センチ、52キロ。「周りの高校生と稽古することすらできなかった」。4歳から始めた相撲人生の大半で負け続けてきたが、くじけなかった。「相撲しかなかった。ずっと負けてる時から、あきらめずにやってきた。だから今がある」。所要7場所の十両昇進は幕下付け出しを除けば史上4位のスピード出世。パートで働き育ててくれた母岩崎信子さん(42)も見守った会見で「(十両は)給料が出る。それが一番」と笑った。

 母校の関学大と京都・鳥羽高では、早くも夏場所前に化粧まわしを贈呈することも内定。15日間の戦いになり、さらに注目度は増す。「十両で生き残れるように。常に挑戦者の気持ちを持って、思い切って自分の相撲を取っていきたい」。居反り、足取り…。173センチ、120キロの体を躍動させて、十両の土俵を沸かせるつもりだ。【木村有三】

 ◆宇良和輝(うら・かずき)1992年(平4)6月22日、大阪府寝屋川市生まれ。4歳でわんぱく相撲に参加。京都・鳥羽高から関学大に進学。13年にロシアで開催された武術と格闘技の世界大会の相撲(85キロ未満の部)で優勝。14年全国学生個人体重別選手権無差別級3位。15年春場所初土俵。同夏場所序ノ口優勝。173センチ、120キロ。

 ◆居反り(いぞり) 相手が上からのしかかるように攻めて来た時、しゃがみ込むように腰を落とし、両手で相手の膝を抱えて担ぎ上げ、後ろに反って倒す技。十両以上では過去3度決まっている。幕内では56年春場所14日目に前ノ山が楯甲に、64年夏場所2日目に岩風が若天龍に決めた。十両では93年初場所12日目に智ノ花が花ノ国に決めた。