西前頭4枚目の勢(29=伊勢ノ海)が、初の金星を獲得した。過去の対戦成績が9戦全敗だった横綱白鵬(31=宮城野)をはたき込みで破った。

 殊勲の白星でインタビュー室に呼ばれると「もう全く、必死で当たっていったので、はっきり覚えてないんですけど…。今日はいつもと違う立ち合いで当たっていきました」と打ち明けた。

 立ち合いの場面。仕切り線の右ギリギリに手を付き、白鵬の正面からずれる形で立ち合った。自動的に、白鵬得意の右かち上げから体を遠ざけた。

 勢は右を差し、左はがっちり固めて、白鵬の右差しを許さない。すると、白鵬がこれを嫌って離れ、見合う形になった。直後、白鵬が右足親指を土俵に引っかけて転倒。気づくと座布団が舞っていた。

 「それはもう…、(頭が)真っ白。何が起こったか分からなかった。横綱ですから、簡単に勝たせてもらえないですし…。頭がぼやーっとしている」と勢。5月の夏場所は、かち上げをまともに食らい、1発で尻もちをついた。以来、白鵬対策を考え続け、右にずれる立ち合いで結果につなげた。

 「うれしい。横綱に勝てたことはうれしいです。でも、頭が動かない。初めて勝てたわけですから、そうなって当然だと思います」。最後までぼうぜんとしていた。