横綱白鵬(32=宮城野)が、横綱初挑戦の平幕宇良(25=木瀬)を右すくい投げで下した。

 裏返された宇良は、横綱の力を痛感した。まげの後ろ、背中にべったり砂がついたまま、白鵬の印象を「すごく緊張しました。とても強かったです」と語った。「バシッと受け止められて、宙を舞って、頭から落ちて…もうなんか」と取組を振り返った。

 豪快に負けたが、負け方は普通じゃない。土俵際で横綱に右から打たれたすくい投げ。最後はあおむけにされたが、頭が下につく寸前まで、右足はブリッジを効かせるように土俵内に残っていた。身長174センチ、体重135キロの体で、涼しい顔をして片足スクワットをこなす。負けてなお、たぐいまれなバランス感覚と柔軟性を見せつけた。

 八角理事長は「宇良」を満喫したようだ。取組前から「どんな相撲を取るのか、想像するだけでもおもしろい」と話し、勝負が決まった後も「善戦じゃないの? (今日のような)上位戦じゃなくても楽しみな力士。何でもできる器用さ。動くのが“宇良の型”だね」と解説した。

 「もっと強くなりたいな」と感じた一番を経て、今日9日目も横綱戦。日馬富士に挑む。結果を問わず館内をわかせる男が、再び名古屋の土俵を熱くする。【加藤裕一】

 幕内後半戦の藤島審判長(元大関武双山)の話 白鵬は中に入られないように、うまく取った。このまま(優勝争いは)白鵬が行くような流れでは。(横綱初挑戦の)宇良は目いっぱい行ったし、輝も押し込んで善戦した。2人ともいい勉強、いい稽古になったのでは。