幕下付け出しデビューから所要2場所のスピード出世を果たした西十両13枚目の矢後(23=尾車)が、今場所最後の一番で大きな白星を手にした。

 6勝8敗で迎えた一番は、西幕下3枚目の木崎(24=木瀬)と対戦。執念の押し出しで破り、7勝8敗と1点の負け越しにとどめた。矢後の番付が、十両最下位(14枚目)まで1枚を残すため、幕下陥落を免れる来場所の十両残留が濃厚となった。

 前日には負け越しが決まったが、ある意味、それ以上の重要性を持った一番に「変なことは考えずに気迫だけで行きました。(負ければ幕下陥落は)チラッとは考えたけど、土俵に上がったら腹を決めていくだけでした」と開き直って臨んだ。

 1学年上の木崎(日大)とは、中大時代に何度か対戦。初土俵だった5月の夏場所でも対戦し、勝っていた。手の内は頭に入っていたが「自分にとって嫌な相撲を取るタイプ。相手の形にさせないよう我慢しました」と言う。懐に飛び込ませまいと突き放し、機を見てまわしを取るイメージだったが、途中で切り替えて「対応しました。そんな相撲も(自分は)取れるので」と、まわしにはこだわらず突き押しに徹した。

 初体験の1場所15日取る関取としてのデビュー場所は終えた。「これから疲れが出るでしょう」と安堵(あんど)の表情。一方で十両2場所目に向けても「もっと自分の形になれるようにすること。勉強になりました」と目を向けていた。