日本相撲協会は30日、大相撲九州場所(11月12日初日、福岡国際センター)の新番付を発表し、阿武咲(21=阿武松)が新小結に昇進した。新入幕から3場所連続2桁勝利の裏には、師匠の阿武松親方(元関脇益荒雄)の地元、福岡・糸田町のマスコットキャラクター「おかつ」の存在があり、そのぬいぐるみを宿舎に持参。勝ちを連想させる縁起物にあやかり、得意の押し相撲で大暴れする。

 福岡市内の宿舎で会見した阿武咲は「素直にうれしいです」と小結昇進を喜んだ。1場所15日制が定着した49年夏場所以降で初めて、新入幕から3場所連続で2桁白星中。同席した阿武松親方から「勝ち続けると『負けたくない』から『負けられない』になる。そうなると(体が)動かなくなる」と心配されたが、21歳はおごることなく「一番一番魂の入った相撲を取りたい」と力強く意気込んだ。

 今年3月に破竹の勢いに乗るきっかけがあった。15年初場所で新十両昇進後、6度あった地方場所で1度も勝ち越せないまま春場所を迎えていた。そんな時に、師匠の地元のマスコットキャラクター「おかつ」のぬいぐるみが糸田町役場から届けられた。同町で毎年行われる田植祭の寸劇の登場人物オカツをモチーフにしたもので、同役場の担当者によれば「“かつ”ということで縁起がいい。親方の地元ということで贈らせていただきました」と説明。阿武咲も「これをもらって初めて関取として地方場所(春場所)で勝ち越せました」と効果に驚いた。

 今場所もぬいぐるみを宿舎のある千葉から持ってきた。「目の前の一番に集中する。勝ち負けに影響されないように」と結果は二の次だが、幸運の女神に見守られながら白星を量産する。【佐々木隆史】